008
 
ルフィが海岸でのやり取りを話し終えた後、子供達三人は急いで荷造りの為に家へ戻ろうと歩き出す。それの後を追ってルフィ達が歩いていた時ーー

「あ!キャプテン!!!」

子供らの一人がそう声を上げたのにルフィ達が前を向く。するとそこにはつい先ほど別れたばかりのウソップがいた。

「…よお!!お前らか!」

一瞬後ろを向いてゴシゴシと目の辺りを擦るとウソップはこちらを向いて笑顔を作る。が、ウソップはついさっき崖から落ちて死んだはずのルフィを見て目を白黒させた。

「お前っ!!生きてたのか!!」

「生きてた?ああ、さっき起きたんだ」

「うん。この綺麗なお兄さんに連れられてずって寝てましたこの人。ーーそんな事よりキャプテン!!話は聞きましたよ!!海賊達のこと早くみんなに話さなきゃ!!」

「……」

少年がウソップにそう言うとウソップはあからさまに困った顔で暫く沈黙した後、突然笑い出して子供達を見つめた。

「いつものウソに決まってんだろ!!あの執事の野郎ムカついたんで海賊にしたててやろうと思ったんだ!!」

「(まぁ、賢明な判断だ…子供にはな)」

「えーーっ!!ウソだったんですか!?」

「なーんだせっかく大事件だと思ったのに」

「くっそー麦わらの兄ちゃんもキャプテンのさしがねか!!」

騙された、と悔しそうにする子供達は先ほどルフィが話した話もウソップの差し金だったのか、とルフィを見つめる。それに何を思ったのかルフィが口を開きかけた時、ウィルの手の平がそれを遮った。

「もがっ」

「ああ、君たちのキャプテンの言う通りだ。悪い冗談はここまでにして…君たちはもう帰ったほうがいいんじゃないか?」

「うん、もう帰らなきゃいけない時間だからおれ帰る。………でもおれ、ちょっとキャプテンをけいべつするよ」

「おれもけいべつする!!」

「ぼくもだ!いくらあの執事がやな奴でもキャプテンは人を傷つける様なウソ絶対つかない男だと思ってた…!」

そう捨て台詞を吐いて帰って行った子供達の後ろ姿を見つめてウソップは少し悲しげに視線を落とした。そんな彼にウィルは黙ったまま冷静に視線を注ぐと場所を変えるぞ、と一言だけ声を発して歩き出した。

ーーーーーーーーーー

「おれはウソつきだからよ。ハナっから信じてもらえるわけなかったんだ。おれが甘かった!!」

場所を変えようと来た場所は海岸だった。適当な岩に腰を下ろしたウソップが自嘲気味にそう言う。ウィルはそれに対して返事をするでもなく、無言でウソップが負傷した左腕を治療する為、彼の腕を引いた。

「す、すまねェ…こんなことまでしてもらっちまって」

「いや…些細な傷でも放っておけば化膿してどうなるかわからないから。……左腕切断、なんてことになったら大変だろう」

「せっ、せせせ切断!!?」

「そんな慌てるな。例え話だ」

「いや真顔で言われたら誰でもそうなるわっ!」

消毒済みの傷口をハンカチでグルグルと巻きながら恐ろしい例え話をするウィルにウソップが若干涙目で抗議する。その様子にナミが溜息をつくと、一呼吸置いて口を開いた。


「甘かったって言っても事実は事実。海賊は本当に来ちゃうんでしょう?」

「ああ、間違いなくやってくる。でもみんなはウソだと思ってる!!明日もまたいつも通り平和な一日がくると思ってる………!!」

だろうな、とウィルが胸の内でそう考えているとウソップは突然勢いよく立ち上がり、グッと拳を握った。


「だからおれはこの海岸で海賊どもを迎え撃ち!!!この一件をウソにする!!!!それがウソつきとして!!おれの通すべき筋ってもんだ!!!!」

「……!(覚悟はあるらしいな)」

「腕に銃弾ブチ込まれようともよ…ホウキ持って追いかけ回されようともよ…!!ここはおれの育った村だ!!おれはこの村が大好きだ!!!みんなを守りたい……!!!」


「こんな…わけもわからねェうちに…!!みんなを殺されてたまるかよ……!!!」

ウィルに治療してもらったばかりの腕を見てウソップが涙を流しながら手の平で涙を拭い訴える。それにルフィとゾロ、ナミ、そしてウィルが一瞬顔を見合わせるとコクリと頷いた。

「とんだお人好しだぜ。子分までつき放して一人出陣とは…!!」

「この村が好きなら、守ってやれ。…こいつらの手を借りてでも」

「よし、おれ達も加勢する」

「言っとくけど宝は全部私の物よ!」

予想していなかった展開にウソップが瞳に涙を溜めながら驚いた顔で今日出会ったばかりの四人を凝視した。

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