013
「まさかこんなガキ共に足留めくってるとは…クロネコ海賊団も落ちたもんだなーーえェ!!?ジャンゴ!!!」
「だ…だがよ!!あんたあの時その小僧と、”太陽と月を追う狼”は放っといても問題ねェって…そう言ったじゃねェかよ!!」
震えながらそう言うジャンゴにクロはほんの一瞬ウソップを見た後、その場にいるだけでどこか異様な”強さ”を感じさせるウィルを見て幾分か落ち着いた様子で口を開いた。
「ああ言ったな…確かに太陽と月を追う狼がお前らの手に負えるなんざ思ってねェ」
新世界はおろか、偉大なる航路入りすらしてない海賊が億越え、それも48億などという破格の賞金がかかっている太陽と月を追う狼もといウィルに敵うはずがないということはクロとて百も承知である。そして、クロはウィルから視線をウソップに移した。
「問題ねェとは言ったな…言ったがどうした!!問題はないはずだ。こいつがおれ達に立ち向かってくることくらい容易に予想できていた。ーー太陽と月を追う狼であれば兎も角だ。こんなガキ共に足留めくってるてめェらの軟弱さは計算外だ。言い訳は聞く気はない」
「…(軟弱、か。)」
それはお前もだろう、とウィルが心の中でポツリと呟いていると辺りを纏う空気が変わった。
「な…軟弱だと、おれ達が……!?」
「……!!言ってくれるぜC・クロ…」
「確かにあんたは強かった」
「何が言いたい」
「おい!!やめねェかブチ!!シャム!!」
クロの”軟弱”という言葉に反応したニャーバン兄弟のブチとシャムがギリリ…と長い爪に力を入れる。大方その物言いに腹が立ったのだろう、慌てて二人を止めるジャンゴだが、ブチとシャムは聞く耳を持たない。
「だがそりゃ3年前の話だ……!!あんたがこの村でのんびりやってる間おれ達は遊んでたわけじゃねェ!!」
「おおともよ。いくつもの町を襲いいくつもの海賊団を海に沈めてきた………!!」
「計画通りに進めなかっただけでやすやすと殺される様なおれ達じゃねェ!!」
「ブランク3年のあんたが現役のしかもこの”ニャーバン・兄弟”に勝てるかってことだ!!」
ブチとシャムの挑発に、クロはメガネを奇妙な上げ方で上げるだけ。それにしびれを切らしたニャーバン兄弟の二人はクロに向かって走り出していた。
「あんたはもうおれ達のキャプテンじゃねェんだ!!」
「黙って殺されるくらいなら殺してやる!!!」
クロをその長い爪で切り裂いた筈だった。だがあったのはクロの持っていた鞄だけ。
クロはいち早く気づき、瞬時にブチとシャムの背後に回っていたのだ。ーーそこからは早かった。一瞬で二人を捕らえたクロにジャンゴを含める海賊達が怯えた表情でその光景を目に映す。