014
「5分やろう。5分でこの場を片づけられねェようなら、てめェら一人残らずおれの手で殺してやる」
「で、でも太陽と月を追う狼は!!」
「それなら心配ない。どうやら彼はこのガキ共の”成長”の為に手出しはしないようだからな。そうだろう?太陽と月を追う狼」
「…ああ、そうだね。君の言う通りだ。おれは手を出さない」
「クククッ、君が動けばすぐにでも片づけられるものを…。その判断が後で命取りになるという事も頭に入れておいた方がいい」
「命取りになる?そうだね……そうなったら所詮彼の言う”守る”なんてその程度だったんだろうと解釈するよ」
「ハッハッハ!!やはり君は面白いな。冷酷無慈悲と名高い太陽と月を追う狼。確かに噂通りの冷酷さだ」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
クルリと方向転換して岩に寄りかかったウィルを見届けた後、クロは再び戦闘態勢に入る部下達を一瞥していた。
「5分…太陽と月を追う狼がいねェなら5分ありゃあ何とかなる!!」
「へっ…何だか知らねェがその太陽と月を追う狼ってのが手出ししねェならこっちのもんだ!!」
「頼むぞ”ニャーバン・兄弟”ーーっ!!5分以内だぞーっ!!!」
ゾロに向かって行くニャーバン兄弟は、刀一本からようやく己の得意とする三刀流で構えるゾロに一瞬で斬られ、宙を舞った。
「い……!!一撃っ!!!!」
「あの”ニャーバン・兄弟”を!!!」
クロネコ海賊団で最強のコンビと謳われるニャーバン兄弟がゾロの一撃でやられたのに海賊達が狼狽える。かと思うと、ゾロはクロに刀を向けて挑発的に笑って言い放った。
「心配すんな…5分も待たなくてもお前らは一人残らずおれが始末してやる」
「やってみろ」
「(血気盛んな男だ)」
ウィルが一人そんな事を考えてるなど露知らず、ゾロはジッと自分を見つめるウィルの視線に気づいて首をかしげた。
「ぬ゛っフーーン!!!!」
「まさか…!!また催眠か!?」
ジャンゴの催眠で倒れていたブチが起き上がり、驚くことにゾロに斬られた傷も塞がっている。大勢の視線がゾロとブチに集中しているのに気づいたナミはしめた!とばかりに遠くの方でスヤスヤと眠っているルフィの元へ駆け出した。
「(チャンス!!今のうちにあいつを起こさなきゃ!!ウィルは手助けはしないなんて言うし…ったくこんな大変な時にあいつは何のんびり寝てんのよ!!)」
「ん!?今度は何する気だこざかしい女め!!死ね!!」
ルフィの元へ走るナミにジャンゴがチャクラムを投げつける。
「みんな大ケガして戦ってるってゆうのにコイツったら!!起きろォ!!!」
「ぶっ!?」
「ナミ危ないよけろっ!!!」
「真っ2つになれっ!!!」
「きゃああ!!」
ルフィを起こすことに成功したものの、目前に迫っていたチャクラムに避けられずにナミは目を固く瞑った。
しかし襲ってくるはずの痛みがないことを不思議に思い目を開ける。すると、視界いっぱいに金色に輝く髪と黒いローブが映し出された。
ドロドロと溶けて原型をなくすチャクラムを見てナミが目を白黒させる。そんな様子を見ながらウィルはナミに視線を向けた。
「ケガはないか、ナミ」
「えっ!?あ、ええ!!ウィルが守ってくれたから…」
「そうか、ならいい。おいルフィ、いつまでも寝転んでないでお前も戦え。長鼻の彼とはそういう約束だろう?」
「ん?あれ、ウィル?」
「ほら、帽子だ。無くすなよ」
「しししっ!ありがとなウィル!!」
「礼なら奴らを倒してからだ。ルフィ、信じてるぞ」
「…!ああ!!」
一連の流れを見ていたゾロは底の知れないウィルの強さに目を見張った。それはウソップやジャンゴも同じ様で、クロもまた人知れず冷や汗を流した。