015
 
「あ、あの一瞬であそこまで…普通に考えて間に合う距離じゃねェぞ、あいつ本当に何者なんだよ!本当にあんな強ェのが仲間なのか!?」


「なッ…!おれのチャクラムを…!!」

「手助けはしないと言ったはずが、早速破るつもりか?太陽と月を追う狼スコルハティ

「何も”絶対に”手助けをしないと言ったつもりはない。履き違えるな。それに…女を狙うのは好かない」

「何を言うのかと思えば…まさか”冷酷無慈悲”な君の口から女を狙うのは好かないなんて言葉が出るとは正直驚きだな」

「そう?どう思おうが勝手だが海軍に追われるのを恐れて海賊をやめたお前にとやかく言われる筋合いはないな」

「…っなん、だと…?」

「下賎な海賊もどきに興味はないと言ったんだ。聞こえなかったのか?」

「…っ!!!」

これが億越えの男でなければ、とクロは顔を歪めた。彼から滲み出る異様な強さが反論することさえ許さない。美しく輝く碧眼に見据えられ、動くことさえ許されないような瞳に本能が警告をする。

ウィルはそんなクロから視線を外すと再び岩に寄りかかり傍観を始めた。

「…ッ皆殺しまであと3分」

「そんな…無茶だ…ジャンゴ船長とブチさんと言えどたった3分であいつらを仕留めるなんて…!!!」

「ブチ!考えてるヒマはねェぞ。お前はあのハラマキを殺れ!!おれが麦わらの小僧を……!!」

それは突然だった。緊迫した状況下で戦闘態勢を整えるジャンゴとブチとは他の、第三者の声が辺りに響いた。

「クラハドール!!!もうやめて!!!」

「!!!」

「カヤ!!お前…何しに…!!!」

「オイあいつは!!屋敷の娘じゃねェか!!アレは計画の最終目的だぜ…!?」

「…(彼女は…ああ、そうか。あの屋敷に怪我人がいることを忘れていた)」

つい数分前、カヤの無事を確認しに屋敷まで行った時のことを思い出してウィルは音もなくルフィに近寄ると小さく耳打ちした。

「少し野暮用を思い出した。おれは外すが、大丈夫だな?」

「おう、なんか知らねェけど大丈夫だ!おれ達に任せとけ!」

分かった、と言う言葉を最後にウィルがこの場から消えた。

一方ウィルは、良くも悪くもあの場に現れたカヤから香る血の匂いで屋敷に怪我人がいることを思い出し、少し速度を上げて屋敷まで向かった。

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