021
「へぇ…」
「キャラヴェル!」
「うおーっ」
「意外と大きいな」
カヤに連れられて海岸へ向かったウィル達は改めて用意された船を見て各々それぞれの反応を示した。
「お待ちしてましたよ。少々古い型ですがこれは私がデザインしました船で、カーヴェル造り三角帆使用の船尾中央舵方式キャラヴェル。”ゴーイング・メリー号”でございます」
船の前に立ち、ルフィ達に船の説明をしたメリーは船を見上げるウィルのそばにゆっくりとした足取りで近づいた。
「先ほどはありがとうございました」
「礼には及ばない。ただの気まぐれだ」
ウィルが変わらずの無表情でそう答えるとメリーはふと静かに笑ってから頭を下げた。
「いい船だなー!!」
「航海に要りそうなものは全て積んでおきましたから」
「ありがとう!ふんだりけったりだな!!」
「至れり尽せりだアホ」
「ルフィは昔からこうだから」
「兄ちゃんならちゃんと教育してやれよ」
「あいつに理解しようとする頭があればちゃんと教育してたよ」
「…お前も大変なんだな」
能天気なルフィをチラッと見てゾロが哀れみの眼差しをウィルに向ける。ウィルは色素の薄い睫毛を伏せながらそれにコクリと頷いてみせた。
「うわあああああああ止めてくれーーーーーーっ!!」
「……ウソップさん!」
「ぎゃああああ」
「何やってんだあいつ」
「とりあえず止めとくか。このコースは船に直撃だ」
ゴロゴロと雪だるまよろしく坂道を転がりながら海岸へ向かってくるウソップを見てウィルは眉間にしわを寄せた。
「ウィル?そんな顔してどうしたのよ」
「ん、ああ。いや、鼻折れないのかなと思って」
「…ウィルって本当天然よね」
「そう?そんなつもりはないけど」
「これは根っからのヤツね」
論点のズレた発言をするウィルにナミがやれやれとため息をつく。その後、一瞬間を置いてからナミが躊躇いがちに口を開いた。
「ねェウィル。変なこと聞いていい?」
「ん…?どうしたいきなり」
「…あのね!もしーーーー」
「おーいウィル!ナミ!早く船に乗れ!」
言いかけたナミのセリフはいつの間にかメリー号に乗っていたルフィの声にかき消された。
「ごめん、聞こえかなった。もう一度言ってくれる?」
「あ、いいのよ!大したことじゃないから。ホラ行きましょ!!」
明るい声でそう言いながらナミはウィルの腕を引っ張ってメリー号に向かう。一方、腕を引っ張っられながらウィルは様子の可笑しいナミを静かに見据えていた。