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「じゃあな。ただ忠告だけはしておきたかったんだ」
「でもおれは行くぞ”偉大なる航路”!!それにウィルはすげェ強いし、おれも強いから大丈夫だ!」
「ハハ…ああ…後は好きにしな。他人のおれにあんたの意志を止める権利はない…。ただ東の海で強いと謳われてるくらいじゃ”偉大なる航路”では通用しないってことだけは覚えておきな」
小舟に乗ったギンはルフィにそう言うと次にサンジに声を掛けた。
「それにサンジさん……本当にありがとう。あんたは命の恩人だよ…あのメシは最高にうまかった。また食いに来ていいか?」
「いつでも来いよ」
「コラ雑用小僧!!そこにいたか!?」
「げ!!おっさん!!」
屈託のない笑顔を浮かべたギンにサンジがそう答えると同時に辺りに怒声が響いた。バラティエのオーナー兼料理長のゼフは状況を把握して空の皿とコップを無言で見る。
「行けよギン」
「ああ…悪ィな怒られるんだろ…おれなんかにただメシ食わせたから」
「なーに…」
バツの悪そうな顔でサンジを見るギン。そんなギンにサンジは皿を手に取ると、それを割って海に落とした。
「怒られる理由と証拠がねェ。もう捕まんじゃねェぞギン!!」
頭と膝をついたギンが段々と見えなくなって行った頃、ゼフの怒声が再び響いた。
「サンジ!!雑用!!てめェらとっとと働けェ!!!」
「おいしいっ」
「うめェな」
「まぁまぁだな」
「…美味しい」
運ばれて来た料理に手をつけたゾロ、ナミ、ウソップの三人は”美味しい”と言ったウィルを見て手を止めた。それに気づいたウィルがそんな三人を見て不思議そうな顔をする。
「どうした?」
「…いや、なんだ。おれのもやろうか?」
ズイッと料理を差し出して来るウソップに更にウィルが不思議そうな顔で口を開いた。
「いいよ。ウソップのだろう?美味しいから食べなよ」
「いいのか?本当に」
「?いいけど」
そう言うと再びウソップが食べ始めて、自分も料理を食べようとした時、目の前にフォークが差し出された。
「はいあーん!」
「…は?」
「は?じゃないわよ。これ美味しいから食べてみて?ね!」
はやく!と急かされながら言われた通りフォークの先端についていた料理を食べる。ナミが満足そうに笑顔を浮かべる様子にモグモグとそれを咀嚼しながらウィルの中に疑問が募る。
「やっぱ天然タラシだなお前」
「なんでそういうことになるんだ?」
「細かいことは気にすんな。早く食べねェと冷めるぜ」
それもそうだと納得したウィルが食べ始める。何故か視線を感じるが気にせず食べることに専念した。
ウィル以外の三人が一瞬動きを止めたり自分の料理を勧めたりしたのには理由があった。いつも無表情のウィルが食べ物を食べている時、幸せそうな顔をしていたからという本人は気づいてない表情の変化があったからだった。
だが特に深くは考えず、ウィルは皿の上の料理を食べ進めていった。