025
 
パリーン

パリン!パキッ…

厨房から絶え間なく聞こえて来る皿の割れる音にウィルは食べる手を止めてチラッとそちらを見る。人が多い厨房では流石に特定の人物の気配を探す事は出来ない。

だがその音の根源が雑用を任されているらしいルフィのものだというのには気づいた。微かに聞こえるルフィの声にウィルは参ったとばかりに瞳を閉じた。

「…(邪魔をしているだけだな)」

「おいウィル、どうしたんだ?腹でも壊したのか?」

「いや、ルフィが心配でね」

「ああ…そういやあいつに雑用なんてできるのか?」

「おれの知る限りあいつがまともに手伝いをこなしたのを見たことがない」

「このレストランが心配になってきたわ」

きっぱりと言い切ったウィルに三人が苦笑いをする。そんな三人をよそにウィルは厨房の方に顔を向けた。

「噂をすればだな。ルフィ」

「ウィル!」

「あ、本当だ。よっ雑用」

「一年も働くんだってなァ」

「船の旗描き直していいか?」

強制的に厨房を追い出されたルフィは見慣れたウィルの姿がある事に驚く。そして一緒にいる三人とテーブルの上の料理を見て顔をしかめた。

「お前らおれをさしおいてこんなうまいモン食うとはひでェじゃねェか!!」

「別におれ達の勝手だよな」

「くらえ」

ゾロがウソップやウィルに相槌を求めてルフィから顔を背ける。その隙を見計らってルフィは腹いせに鼻くそをほじるとそれをゾロの水にポチャンと落とした。

「あ…ああ。まあな」

その一連の流れを見ていたウソップとナミが堪え切れない笑いを必死に抑える。ウィルは一つため息をつきながら軽くルフィの頭を叩いた。

「いてっ」

「行儀が悪い」

「まァでも確かにここの料理はうめェよ。お前にゃ悪ィと思ってるが」

言いながらゾロがルフィの鼻くそが入った水を飲もうコップを傾ける。

「これはてめェが飲め!!!」

「うぶっ!!!」

ゴクン!

ルフィの鼻くそに気づいていたゾロはルフィを引き寄せると無理やり鼻くその入った水を飲ませた。

「な…!!何てことするんだお前はァ」

「てめェが何てことするんだ!!!おいウィル!こいつどうにかならねェのか」

「これもルフィだ。受け入れろ」

「実はお前が甘やかしてたんじゃねェのか!?」

「いや、そんなことはない。ただ…手のかかる子ほど可愛いって言うよね」

「甘やかしてたな」

「してたわね」

「てか今もしてるな」

ウィルが肉料理をルフィに分けている様子にゾロ、ナミ、ウソップの三人は新たな発見をした。冷酷無慈悲と名高いウィルは実は、弟に甘かったという事を。

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