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「さき程は失礼。お詫びにフルーツのマチェドニアを召し上がれ。食後酒にはグラン・マニエをどうぞ お姫さま」
色取り取りのフルーツのマチェドニアと食後酒をナミの前に置いたサンジは次にウィルの前に同じ物を置いた。
「?」
「さっきは悪かったな。食っていいぞ」
「いいのか?」
「おう。そのかわり残すなよ」
無言で頷いたウィルはフォークを取ってイチゴを口に含む。
「美味しいな。そういえばここの副料理長だっけ?」
「ああ。おれはサンジ。お前はこいつらの仲間か?」
「そうだな。おれの名はウィル。よろしく」
「雑用が言ってた仲間に綺麗な奴がいるってのはやっぱりお前のことだったのか」
「綺麗か…別にそんなんじゃないよ。ーーところでサンジ」
フォークを置いてウィルはサンジの顔を見つめる。特徴的な眉に聞き覚えのある名前。推測があっていれば、と口を開こうとした瞬間、ウソップがバンバンとテーブルを叩いた。
「おいっおれ達には何のわびもなしか!!男女差別だ。訴えるぞこのラブコック!!」
「ウィルにもやってるから男女差別にゃならねェよ。それにてめェらにゃ粗茶出してってんだろうが礼でも言えタコ野郎!!」
「お!?やんのかコラ!言っとくがウィルはノーカンだ!やっちまえゾロ!!」
「てめェでやれよ…」
「(おれの勘違いかもしれないな)」
裏の世界で人殺しの一族と名高いヴィンスモーク家に彼と似た眉の姉弟を見た事がある様な気がした。だがウィルは再び口を開くでもなく黙ってフルーツのマチェドニアを食べ始める。
「おい、なんか言いかけなかったか?こいつのせいで聞こえなかった」
「こいつのせいとはなんだラブコック!客への態度がなってねェぞ」
「いや、なんでもない」
「そうか?ってオイ雑用!!何お前がフルーツ食ってんだ、出せ!」
「ぶっ!」
サンジがこそこそとウィルのフルーツを口いっぱいに含むルフィの頭にかかと落としを決める。
騒がしいレストランだと思いながらもウィルはこの雰囲気が嫌いではなかった。
出身が北の海であればジェルマ66ーー別の名を戦争屋と呼ばれる一族と関わりがあるのかもしれない。
と、そこまで考えてウィルは考えるのを止めた。誰にだって触れられたくない過去はある。
それにルフィがいい奴だと言うのだ。ルフィの勘は当たる。ウィルから見ても特に違和感を感じるわけでもない。ウソップと言い合うサンジを見て人知れずウィルは思った。