033
 
「死ななかっただけまだ運が良い方だな。”偉大なる航路”って場所はそういう所だ」

「?」

「?」

「何が起きてもおかしくねェって事だろ」

「それにしても七日で壊滅か…。少し無謀すぎる」

「…っ!」

「くーーっぞくぞくするなーーっ!!やっぱそうでなくっちゃなーーっ」

「てめーは少しは身の危険を知れ!!」

「ルフィは猪突猛進タイプだからね。言っても聞かないよ」

「何言ってんだ、お前兄貴だろうが!」

”偉大なる航路”に期待に胸を膨らますルフィを見てウィルがポンポンと頭を撫でる。ルフィが嬉しそうに笑うのにつられてウィルも少しばかり微笑んだ。

「でもこれでおれの目的は完全に”偉大なる航路”にしぼられた。あの男はそこにいるんだ!!!そうだろ、ウィル」

「ん、いるね。世界最強の大剣豪として」

「へっ、上等だ」

ニィッと不敵な笑みを浮かべてゾロが言う。この短期間で観察していたがゾロはミホークが気に入るタイプの男だ。つい先日会ったばかりのミホークを思い出しているとサンジが視線を下に下げながら呆れたようにこちらを見た。

「…ばかじゃねェのかお前ら真っ先に死ぬタイプだな」

「当たってるけどな…バカは余計だ…。剣士として最強を目指すと決めた時から命なんてとうに捨ててる。このおれをバカと呼んでいいのはそれを決めたおれだけだ」

「あ、おれもおれも」

「勿論おれも男として当然だ。そうだろ、ウィル!」

「え?ああ」

「お前はウソだろ。ウィルも返事してんじゃねェよ…」

「いや、ついね」

「……けっばかばかしい」

突然ウソップに話を振られたウィルは一瞬きょとんとすると直ぐに相槌を打った。エースやサボ、ルフィ以外には怖がられてあまり話を振られるなど今までなかったが故、少しだけ意外だった。

他に親しくはないが一方的に絡んでくる者などもいたがウソップは仲間で、歳も近い。それが少し新鮮だった。

「ところでお前”鷹の目”とどう言う関係だ?」

「そうだな、友達?かな」

「へェ…。お前ぐらいに強いと自然と強ェ奴が寄って来るのか」

「…といってもいつも飲んでるだけだ。ミホークとあともう一人のうるさい男とな」

「お、お前飲める口か?」

「おれは少し。あまり酒は強くない」

「飲めそうな顔してんのにな」

「飲めそうな顔ってなに…」

飲めそうな顔に見られていたのか、とウィルが嬉しいような嬉しくないような感覚に陥る。それを見ていたルフィがそういえば、と口を開いた。

「酒はしらねェけどよ、ウィルは子供の頃よく攫われそうになったんだ」

「ああ、こんだけ綺麗な顔してりゃおめーさらう輩も出て来るだろ」

「それで、おれも一緒に攫われそうになった時凄かったんだ!ウィルが一瞬でそいつら倒したんだぞ、お前らにも見せたかったなー」

「ああ、あの時の…。あれは少し気絶しておいてもらっただけだよ、大袈裟だ」

「いや大袈裟だじゃねーよ!お前ガキの頃からそんな強かったのかよ!?」

「どうだろう…。そうでもないよ」

ウィルがそうでもない、と否定する一方でルフィはウィルはすっげェ強いんだ!兄弟の中でも一番強かったんだぞ!とウィルの武勇伝を語る。何故いきなり昔の話を、と思ったがルフィが楽しそうに話すのを見てウィルは口を閉じた。

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