034
それから程なくして、クリーク海賊団の雄叫びがバラティエに届いた。騒々しい音と共に複数の足音が向かって来る。
「どけどけコック共ォ〜〜〜っ!!!」
「ま、待ってくれ首領!!おれ達の艦隊を沈めたあの男がっ」
ギンが押し寄せて来る仲間達を見て慌てて声を張る。その強さから世界政府に危険視されているあの太陽と月を追う狼がバラティエにいる事をクリークは知らない。またあの悪夢が蘇るのがギンの脳裏をよぎったその時だった。
ズバン!!!
クリークの巨大ガレオン船が真っ二つに斬られた。
「え……」
「何だ!!!」
「何が起きたァ!!!!」
「首領・クリーク!!!本船は…!!!斬られました!!!」
「斬られた?斬られただと!!?この巨大ガレオン船をか!!?そんな…!!!バカな話があるかァ!!!!」
その場にいる全員が一体何が起きたのかと焦る中、ウィルはガレオン船の斬り口を見て全てを理解した。こんな事ができるのは彼しかいない。
「結局追ってきたか」
視界に映る棺船を見て僅かに口角を上げた。
「まずいっ!表の船にナミもヨサクもジョニーも乗ったままだ!!」
「くそっ!!もう手遅れかもしれねェぞ!!!」
ガレオン船を切った衝撃で波が大きく荒れる。メリー号に乗っている三人を助けようとルフィが表に出た時、海面からヨサクとジョニーが顔を出した。
「アニギ〜〜!!」
「ア〜〜二ギィ〜〜っ!!!」
「何してるの」
「あ!ウィルのアニギ〜〜!助けてくだせェ!!」
「お願いしやすウィルのアニキィ〜!!」
「はぁ。身体の力抜いてて」
「え、そんな事したら沈んじまいますよ!」
「いいから。言うこと聞いて」
ジョニーとヨサクが不思議そうな顔をしながらもウィルの指示に従う。すると次の瞬間、二人はイルカのジャンプさながら海面から飛び出し、バラティエに打ち上げられた。
「ぶへっ!!」
「うわ!!」
「おお!すげェなウィル、何したんだ!?」
「イルカのジャンプみてェだったな」
「イルカ?ああ、今のね」
海中に噴水を作り出し、その水の衝撃で二人をバラティエに打ち上げたウィルは説明せずに全身びしょ濡れの二人に近づく。
そして手のひらに作り出した淡く光る球体をヨサクとジョニーに当てた。
「ウィルのアニキ?ってなんかあったけェ!!」
「それだけじゃねェ、服も乾いてるぜ相棒!すげェっすねウィルのアニキ!!!」
「さすがにびしょ濡れじゃ気が引けるから」
「すげーな。服を乾かす能力があるのか?」
「服を乾かす能力って微妙だろ」
「その説明は後だ。ーーヨサク、ジョニー。ナミがいないな。大体の予想はついてるが、あいつはどうした?」
シロップ村を出る時に感じた違和感を思い出してウィルがヨサクとジョニーに問いかける。あの時ナミが何かを言いかけた時に聞くべきだった、と拳を握り締めた。