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ズバン!!

「アニギィ〜〜〜っ!!!」

ミホークに小刀で胸を刺されたゾロは目の前にいるミホークから視線をそらさずにその場から一歩も動かなかった。ボタボタと滴り落ちる血液が木材を赤く染める。

「このまま心臓を貫かれたいか なぜ退かん」

「さァね…わからねェ…ここ・・を一歩でも退いちまったら何か大事な今までの誓いとか約束とか…いろんなモンがヘシ折れてもう二度とこの場所へ帰って来れねェような気がする」

「そう それが敗北だ」

「へへっ…じゃあなおさら退けねェな」

「死んでもか………」

「死んだ方がマシだ」

「(何という強き心力………!!!敗北より死をとるか…やつの目はどうやら健在のようだな)」

迷う事なく敗北より死を選ぶと言い放ったゾロの強い瞳に、棺船に乗るウィルに視線をやると彼は珍しくも笑っていた。まるで自分の見込んだ男は中々だろうと言うような表情にミホークはフッと僅かに口角を吊り上げた。

「小僧…名乗ってみよ」

「ロロノア・ゾロ」

「憶えておく 久しく見ぬ”強き者”よ。そして剣士たる礼儀をもって世界最強のこの黒刀で沈めてやる」

「アニキもういいやめてくれェーーっ!!!」

「三刀流奥義!!!三・千・世・界!!!!」

ドン!!

「(終わったか…)」

結果はゾロの敗北だった。二本の刀を折られたゾロは一本だけ残った刀を鞘に収めるとくるっとミホークの方を振り返り、両腕を広げた。一体何を、とウィルはゾロの行動に疑問を抱いた。

「何を…」

「背中の傷は剣士の恥だ」

「見事」

ズバン!!!

「ゾロォーーっ!!!」

「(生き急ぐな……!!若き力よ…!!!)」

「うわあああああああ」

「ゾロ!!!」

「アニキーーーーーーーーーーッ!!!」

ミホークに手も足も出なかったゾロは潔い程に見事な戦いぶりで敗北した。しかし敗北はしたものの、この戦いを機にウィルのゾロへの見方が変わった。圧倒的な力の差を知りながらも諦めない心力の強さ、そして彼の信念をまげない態度に強く感心したのだ。

「(これはまた大物を捕まえたな…ルフィ)」

「これが”偉大なる航路グランドライン”の……世界の力か………!!」

「”海賊狩りのゾロ”が手も足も出せねェなんて…!!!」

クリーク海賊団がミホークの圧倒的な強さに慄く中、一部始終を見ていたサンジは理解できないという風に顔を歪めた。

「(何でだ……!!!クソ野郎イカレてるぜ……!!相手は本物の世界一だぞ 結果は見えてた…………!!!死ぬくらいなら野望を捨てろよ!!プライドでもなんでも捨ててウィルにでも助けて貰えばよかっただろ…!!)」

仲間だという、あの美麗な男に助けてくれと言えばよかったのになぜ、とサンジは頭を悩ませた。何をそんなに躊躇う必要がある。

「簡単だろ!!!野望捨てるくらい!!!」

ザパァン!!と水しぶきを立てて海に沈むゾロにサンジがそう叫ぶ。野望を捨てることは簡単ではない。野心家であれば尚更だ。サンジが理解できないのも仕方がない事だと、ウィルは黙ってそれを聞いていた。

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