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「だから女を一人探してるっつってんだろ!!!半魚野郎!!!」

「ホウ…下等な人間が言ってくれる…一度は許すが半魚ってのは二度と口にするな!!」

ウィルとゾロはあれから程なくしてアーロンパークに連行された。抵抗しようと思えばそれは容易くできたが、ナミを見つけるにはアーロンとやらに話を聞く方が早い。

「それはそうと人間、てめェはなぜそこに立っている?」

ゾロのように拘束され、地べたに座るのではなく、少し離れたところで突っ立っているウィルにアーロンがギロリと睨みを効かせる。拘束しようにもできなかったという方が正しいか。

「その質問はおかしいとは思わないか」

「ああ?」

「なぜおれが地べたに座らなければならない?」

「シャハハハハハハハハ!!なぜだと?いいか下等種族、人間が魚人に逆らうってのは”自然の摂理”に逆らうも同然の行為だ!!!」

「ほう。なら今お前がおれに楯突いてるということも”自然の摂理”に逆らうも同然の行為だな」

ウィルの放った一言にアーロンの顔つきが変わる。

「イマイチ状況が飲み込めてねェようだな 下等な人間ごときが誰に向かってナメた口を聞いてる!?」

「口を開けば下等、下等と。お前が人間を”下等な種族”と罵るのは些か疑問に感じるな」

「なんだと?」

「言語を話す能力も、歩く能力も地上で呼吸する能力も魚類にはない」

「てめェアーロンさんに向かってなにを!」

ゾロの側に立っている魚人がそう叫ぶがウィルは見向きもせず続けた。

「人間の持つ要素がなければ貴様らなど海で泳ぐだけの魚に過ぎない それを下等な種族と罵ることは自分自身を罵ることと同義だ」

今にもブチ切れそうなアーロンに魚人達がごくりとその様子を見守る中、女の声が緊迫したこの状況を打破した。

「あら、誰かと思えばウィルじゃない」

「な…」

「……」

「ナミか ちょうどいい、コイツら知り合いか?」

「バカ言わないで ただの獲物よ 今回はこいつらからたっぷりお宝を巻き上げさせてもらったの」

それに…とナミが続けてウィルを見据える。

「この男、すごく顔がいいでしょ?オークションにでも出そうかしらと思ってね」

「シャハハハハ!!そりゃいい!だがオークションにかける前に少し調教が必要そうだな」

「面白い 魚の分際でおれを調教だと?」

「ちょっとあんた…!!」

「おー…ウィルのヤツ口も達者だな」

「…オイ、てめェ今なんと言った?」

「すまない、魚には人間が何を言っているか理解できないようだ ーー超音波でも使って話してやろうか?」

「…!!下等種族の人間が!誰に口を聞いてんだァア!!!」

激昂したアーロンの瞳孔が開く。せっかくナミが仲裁に入りアーロンが切れる前に何とか話をそらしたというのに一体ウィルは何を考えているのか。
ウィルに向かって行くアーロンを見ながらナミは顔を青くした。

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