004
「おれの名はアルテナ・ウィル。…よろしく」
「ああ。ところでお前48億の賞金首なんだろ?やっぱり強いのか」
「ちょっと何言ってんのあんた!」
ニィ、と口角を吊り上げながらそう尋ねるゾロに当たり前でしょ!と言わんばかりの様子でナミが答える。威勢の良い仲間だ、と内心思いながらウィルは再び口を開いた。
「そうだね、そう簡単にはやられないかな」
「なるほどね。通りで隙がねェワケだ」
「褒め言葉として受け取っておくよ。ーーああ、それとナミ…だったか?」
「え!私!?」
「そう、君。あまりにも怯えてるから。別にとって食ったりしない。ルフィの大切な仲間みたいだからな」
「あ、うっ、うん!私こそよろしく!」
ウィルが覗き込むようにしてナミを見つめる。するとその穏やかな表情と端整な顔立ちを目の当たりにしたナミは思わず赤面した。噂には聞いていたがここまで整った顔の男を見るのは初めてで。想像を遥かに超える程の美麗な男に息を飲んだ。
「あ、そうだお嬢様に頼みがあるんだ!!」
「頼み?私に?」
「ああ!おれ達はさ、でっかい船がほしいん」
「君達そこで何をしてる!!困るね勝手に屋敷に入って貰っては!!」
ルフィの台詞と被せて咎めるような声色が耳に届いた。この屋敷の執事らしい男はツカツカとこちらまでやってくると主人のカヤの盾になるようにして立ちはだかる。すると執事の男はある人物を視界に捉えた。
「君は…ウソップ君だね…。君の噂はよく聞いてるよ。村では評判だからね」
棘の含んだ物言いに微かにウィルの眉が動く。見てくれは誰が疑おう立派な執事かもしれない。だが微かに香る潮の匂いと血の匂い。ただの執事に染み付く匂いではない事に気付いた彼は視線をそらさずに執事を観察した。
「君には同情するよ…恨んでいることだろう。君ら家族を捨てて村を飛び出した”財宝狂いのバカ親父”を」
「クラハドール!!!」
「てめェそれ以上親父をバカにするな!!」
「……何をムリに熱くなっているんだ。君も賢くないな。こういう時こそ得意のウソをつけばいいのに…本当は親父は旅の商人だとか…実は血がつながってないとか…」
「うるせェ!!!!」
バキッ!!とウソップがクラハドールを殴る音が閑散とした敷地内に響き渡った。
「ルフィ、彼は仲間?」
「ん?いや、ちげェぞ」
「そう…?まぁいいけど…」
長い睫毛に縁取られたサファイアブルーの瞳がウソップとクラハドールを映す。ウソップは更に挑発させる様な言葉を吐くクラハドールの襟首を掴むと拳を振りかざそうとする。が、それはやんわりと第三者によって止められた。