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「それ以上殴るな。彼の思う壺になる」

「っ!!でもこいつはおれの親父をっ…!」

「確かにその点においては彼が悪い。だが…だからと言って君が彼に暴力を振るっていいという理由にはならない。それに、彼女も驚いているから」


ウィルの視線の先を追ってウソップがカヤの方へ顔を向ければ彼女は悲痛そうに顔を歪めていた。


「やめてウソップさん、これ以上暴力は…!悪い人じゃないんです、クラハドールは…!ただ私のためを思って過剰になっているだけなの………!」

「……(私のため、ね)」

「出て行きたまえ…ここは君のような野蛮な男の来る所ではない!!!二度とこの屋敷へは近づくな!!!」

「ああ…わかったよ。言われなくても出てってやる。もう二度とここへはこねェ!!!」


スタスタと門に向かって歩いていくウソップは一度も振り返ることなく門の外へ出て行った。そんな中、ウィルは黒いフードを鬱陶しそうに払うと異様に無機質な瞳でクラハドールを射抜いた。


「あいつを追い出すために、ここまですることが?…お嬢様を守る為とは言え随分と見上げた忠誠心だ。ーーおれにはお嬢様を守るという大義名分にかまかけて、何かが裏で暗躍している様に思うが…そこはどうだろうね」

「何を言っているんだ君は!……っ!?その刺青…!!!」

「ルフィ、ゾロ、ナミ。行こうか……いつまでもここにいる義理はない」

「あ、ええ!」

「おー!ウィルどこに行くんだ?」

「オイ、お前らも来いガキ!!」

ウィルの手の甲にあるタトゥーを目にした瞬間、尋常ではない程に顔を青くさせ、カタカタと小刻みに震えるクラハドールを視界から外し、ウィルはクルリと踵を返してルフィ達に声をかけると門の外へと向かって行った。

ーーーーーーーーーー

「しかしお前もやるじゃねェか。あの執事黙らせてよ」

「そう…?別におれのしたいようにしただけだから」

「ししし!ウィルは昔っからこうでよーよくおれも助けられたんだ!!」

「へェ…あんた達って昔から仲よかったのね」

「ああ、ウィルはおれの一番最初の友達だからな!それに髪も目もキラキラしてて好きなんだ!」

「お宝に興味なさそうなのに珍しいのね…。いやでも確かに、綺麗…よね」

ルフィとウィルの間に入ってジーッとウィルを見つめるナミに彼はしぱしぱと物珍しげに瞬き、首を傾げた。

「……?」

「あっ、ごめん、綺麗だなと思って!!」

「ああ、そう。別に謝ることじゃないから」

「おーモテる男はすげェな」

「おれが?」

「お前以外誰がいるんだよ」

「そういう事を気にしたことがないからわからないんだが…。ならゾロもそうだろう?」

「は?」

「東の海に入ってからよく君の名を聞くからね。海賊狩り…違う?」

「ああ、その通りだ。まァ今は海賊になっちまったがな」

「ルフィは周りを惹きつける力があるから」

「?」

ゾロとナミがその言葉に揃って首を傾げるのを見てウィルは再び前を向いて歩き出した。

「(類い稀な、この海において最も恐るべき力を、ね)」

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