052
「オイ長っ鼻」
「おい 誰が長っ鼻だ!」
「ナミさんは本当にお前を殺そうとしたのか?」
「そりゃもう!ウィルがいなけりゃ今頃やばかったぜ」
「ケッ おれが一度”小物”ってハッパかけちまったから勢いで殺っちまおうと思ったのかもな」
「小物!?」
「………」
「ナミさんの胸のどこが小物だァ!!!」
「てめェの頭はそういう…!」
サンジとゾロが再び突っかかりあう。その様子を横目にウィルは彼らの衝突を止めるのを諦めた。この短時間でよくもまぁここまで諍いができるなとある意味感心した。
「ウソップ」
「ん?どうしたウィル」
「お前は本当にナミがお前を殺そうとしたと思うのか?」
「?ああ ウィルが間に入ってくれなけりゃおれは死んでたかもしれねェしよ」
「そうか ルフィを起こす」
「いきなりだな!別にいいけどよ」
ウソップと話していたウィルは道のど真ん中で眠るルフィに近づくとすやすやと寝息を立てるルフィの頬を軽く叩く。
「ルフィ、起きろ 話したいことがある」
「ん…?ウィルか ししし!おはよう!」
「ああ、おはよう ゾロ、サンジ お前たちも少しこっちに来い」
ウィルの一声にルフィをはじめ、呼ばれた全員は何事かとウィルを見つめる。
「どうした 戦闘か?」
「違う ナミについて少し話しておきたくてな」
「あ?あの小物女がどうした」
「てめェ!何度も言わせるな ナミさんの胸のどこが小物だクソマリモ!!」
「文句があるならかかってこいクソコック ぶった斬ってやる」
これで何度目かの怒鳴り合いにウィルが静かに彼らを見ながら言う。
「少し黙ってくれないか それともおれに話をするなということか?」
「え?や、別に…」
「チッ…元はと言えばコイツが」
サンジとゾロが有無を言わさないウィルの雰囲気に押し黙った。傍らでそれを見ていたウソップは三人のやりとりに自分が関わっていなくてよかったと心から安堵した。
「(ふゥ、見てるこっちがハラハラするぜ あいつだけは怒らせないようにしねェとな)」
「それじゃあ話すが 何かその前に言っておきたい事があるやつはいるか?」
ウィルの問いに全員がふるふると首を横に振る。それを確認したウィルは端正な唇をゆっくりと動かした。
「ウソップ」
「え、お、おれか?」
「お前以外誰がいる 話を戻すぞ。ナミがお前を殺そうとしたと言うがそれは間違いだ」
「なんでそんな事がわかるんだ?お前も見たろ おれがあいつに刺されそうになったところを!」
「ああ 見たな だがあれには少しカラクリがある。順を追って話そう」
サファイアブルーの双眸を彼らに向けてウィルは事の詳細を話し始めたのだった。