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一方その頃ーー
「(助かった…!!成功だ!!こんな時のために作っといてよかったぜ"ケチャップ星"!! あいつおれに"水鉄砲"とやらが当たったと思ってやがる!!へへ…さっさと帰りやがれ!!)」
魚人のチュウに追いつかれたウソップは"ケチャップ星"を使いあたかも攻撃が当たったかのように見せかけ、その場に倒れてみせたのだ。
ウソップの身体に付着した大量のケチャップを見てそれを血と勘違いしたチュウが踵を返して行く。
「(……ったくおっそろしい種族がいたもんだぜ 町の民家を全部ひっくり返すような奴らだぜ?ウィルならまだしもおれにはとても手に負えねェ まあナミは可哀想だと思うし力を貸してェ気持ちはやまやまなんだが死ぬのはパスだ…)」
チュウがアーロンパークへ戻っていく中、ウソップはチラリと小さくなっていくチュウの背中を見て倒れた状態からその場に座り直した。
「……で…でもあれだな…一応血ノリケチャップはついてるものの もう少し…なんかこう…死闘の跡ってのがほしいな……!!」
ウソップは地面の土を見て閃いたようにそれをゴシゴシと体にこすりつけた。
「戻ったら…なんて言おうか いやー敗けちまったぜすまん…か…?」
「おれ達もう仲間だろ」
ウソップの頭の中にルフィの言葉が脳裏をよぎる。
「いやーあの野郎今一歩で取り逃がしちまった…かそれとも いやーナミ泣くなよおれ達は当然の戦いをしたまでだ…か?」
「死んだ方がマシだ」
「レディーを傷つける様な一味より百倍いいか……!!」
「お待ちしてやしたぜアニキ達!!!」
「どれほど辛い選択だったかわかる?」
「何事も挑戦しなければ成功はない お前ならできると信じてる」
必死に言い訳を考えながら次々に浮かんでくる仲間たちの言葉に泥を塗りたくる手が震えて来る。
「いやーおれの戦いっぷりときたら…みっともねえ!!!!」
ガクガクと震える足で立ち上がったウソップは足の震えを誤魔化すように大声をあげた。
「ちょっと待てサカナ野郎ォ!!!!」
「なんだ まだ死んでねェのか…チュ」
もう後には戻れない。だがどこかスッキリしたような気分だった。
桁違いの強さと美しさを併せ持つあの男をこれ以上幻滅させたくない。
信じてると言われた以上男なら後には引けないのだ。
ウソップはウィルの放った言葉を胸にチュウと向かい合うのだった。