063
「ブゥーーーッ!!!!…っっぱァ!!」
気を失っていたはずのルフィが空に向かって水を吐き出した。かなりの勢いで飛び出した水はまるで噴水のようで。
「何だ!!?」
「きたか!後は足枷をはずすだけだ!!」
「足枷?」
ルフィが目を覚ましたことにいち早く気づいたサンジは海へ潜ろうと靴を脱ぐ。
「ああ あの野郎自分で地面に足めり込ませて抜けなくなりやがって 魚野郎にコンクリートごと海に放り込まれたんだ」
「なるほど 仲間になって早々苦労をかけるな」
サンジから事の発端を聞いたウィルはあまりにもバカらしいその理由に目を閉じた。
「まァそんな船長について来ちまったおれもおれだ 理解ある副船長がいて救われるぜ」
「勘違いするな おれは副船長なんかじゃない」
「バカ言え お前以外に誰があのトラブルメーカーをコントロールできるってんだ …っと、あいつらの気が逸れてるうちに行ってくる!あの死に損ないを頼んだぞウィル!」
「…ああ 任せておけ」
満身創痍のままゾロが刀を構えアーロンの前に立ちはだかる。その姿を見てそう言ったサンジにウィルが頷いた。
流石のウィルでもあそこまで瀕死な仲間を戦わせようとは思わない。いくら彼らの成長を妨げてはならないと言っても死んでは元も子もない。
サンジが海に潜っていったのを見届けてからウィルは一通り海水を吐き出したルフィを見下ろした。
「気を取り戻したか ルフィ」
「ウィル…口の中がしょっぺェし力が抜ける」
「バカ 後先考えずに行動するからだ。海には気をつけろと何度言ったらわかるんだお前は」
「ししし!まァいいじゃねェか!死んでねェんだし!」
「そういう問題じゃない。ーー"雲"」
ウィルは能天気なルフィに頭を抱えながらもアーロンと向かい合うゾロの足元に雲を作り出した。
必然的に雲の上に乗るような形となったゾロは、一体何が起きているんだと不思議そうに足元を見ている。ウィルはその間にゾロごと雲を自分の元へ引き寄せた。
「おい、こりゃ一体…お前の仕業か?ウィル」
「瀕死のお前を戦わせるわけにはいかないからな」
「こんな傷舐めときゃ治る」
「その傷が舐めて治るほどのものなら医者はいらな」
「す…っすんげェ〜!!ウィル!お前そんなことできたのか!?」
ウィルの言葉を遮ってルフィが目を輝かせた。その目はゾロの乗る雲に向けられている。
「ああ」
「なんで教えてくれなかったんだよ!ゾロだけずりィぞ!おれも乗りてェ!」
「こうなると思ったからいちいち言わなかったんだ この戦いが終わったら乗せてやるからさっさと終わらせろ」
「本当か!?わかった!すぐ終わらせる!」
首だけ海から出した状態でなんとも説得力のない姿でそう言うルフィに呆れた表情を見せるウィル。
その一方でゾロは雲なのになんで乗れるんだ?と不思議そうに首を傾げるのだった。