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「だからなんだ!!!そんなの自慢すんな」

強靭な顎の力で石柱を噛み砕いて見せたアーロンに対抗してルフィが目の前にあった石柱を殴る。

「………別に噛みつかなくても石は割れるぞ」

「!…たしかにその通りだ」

石柱を殴って割って見せたルフィのその言葉に、まさかそう来るとは思ってなかったウィルは意外と変なところで頭が回る奴だと感心していた。

「…おい 今の感心するとこじゃねェからな」

ウィルがポロッと洩らしたその一言にゾロが少々呆れながらそう言った。
ルフィも大概ウィルに懐いているがウィルもウィルだ。弟贔屓が過ぎる。

「へ理屈を…!!!バカで非力で愚かな種族が人間だ!!!海に沈んでも一人じゃ上がってこれねェ様なてめェに何ができる!!!」

「何もできねェから助けてもらうんだ!!!」

ルフィは側に落ちていた刀を二本手に取った。

「しっしっしっし!!」

「?あいつ剣も使えるのか?」

そんなサンジの疑問は直ぐに晴れる事になる。どういうわけかルフィはただ刀を闇雲に振り回してアーロンに向かって行ったのだ。

「ぬああああ」

「何だ そりゃ!?ただ刃物を振り回してる様にしか見えんな…!!!」

ブンブンと振り回される刀をアーロンが鼻で弾く。

ギィン!!!

「遊びなら付き合うつもりはねェぞ オォ!?」

ルフィが持っていたもう一本の刀も鼻で弾き飛ばされた。
ウィルでさえ一体何を考えてルフィが刀を使っているのかわからず、じっとその光景を見つめている。

「くだらねェマネは………」

「歯ァくいしばれ!!!」

刀を弾いた事で一瞬隙が出来たアーロンの顎にルフィの拳がヒットした。

「ウォ!!!!グアアアア!!!」

ガードも出来ずモロにそのパンチを食らってしまったアーロンがその場に倒れる。
どうやら衝撃で歯が砕けたようだった。

「おれは剣術を使えねェんだコノヤロー!!!」

「………は?何言い出すんだあの人は…」

「航海術も持ってねェし!!!料理も作れねェし!!ウソもつけねェ!!それにまだお前を一瞬でブッ飛ばせるほど強くもねェ!!」

ゾロやナミ、サンジ、ウソップ。そしてウィルの事を言っているのだろう、ルフィが鼻息荒く続ける。

「おれは助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!!!」

胸を張ってそう言い切ったルフィをウィルのブルーの瞳が捉える。

「シャハハハハハ…てめェのフガイなさを全面肯定とは歯切れのいい男だ!!!てめェみてェな無能な男を船長に持つ仲間達はさぞ迷惑してるんだろう なぜてめェの仲間は必死にてめェを助けんだかなァ…」

何故、か。ウィルはアーロンの放ったその一言に考える。
幼少期から変わらないルフィの純粋で曇りのない性格。
かつての自分はルフィのそんな性格に救われていた。

眼に映るもの全てがどうでもよくなっていた時、誰かを信用するという気持ちを思い出させてくれたのは他でもないルフィと二人の兄達だった。

難しい事など考えず、年相応に四人でゴミ山を駆け回っていた時の事を思い出して自然と表情が穏やかになる。
あの時ほど満ち足りていた時はなかった。そう思う程にウィルにとって兄弟で過ごした日々は何より大切な時間であったのだ。

「?」

一方ウィルが昔の事を思い出していた時、ゾロは珍しくとても穏やかな表情のウィルを見て一体何事だと首を傾げた。

いつもの無表情とは程遠い。一体何があのウィルをそんな顔にさせたのかという疑問がゾロの頭の中で浮上した。

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