08
「うぉおおお!!レンを離せこの変態野郎!!!」
「ん〜いい顔だ◆」
「……っ!レオリオ」
耳に響く叫び声に目を覚ますとレオリオが長い木の枝を持って私の方に向かって走ってきていた。これは一体どういう状況だ。キョロキョロと視線をあちらこちらへと向けると真上に自称奇術師、変態ピエロがいた。
「おはよう◇よく眠れたかい?」
「眠れるわけないだろ 離せ!」
「レンを離せって、言ってるだろうがぁああ!!」
いつの間にかレオリオがすぐ近くまで来ていた。ヒソカは振り下ろされる木の枝をいとも容易く避けると私を腕に抱えたままレオリオに手を伸ばした。こいつ、殺す気だ!
拳を握りしめて再びヒソカを殴ろうとした私は人の気配を感じて動きを止めた。
ドゴッ!!
「ゴン!?」
やって来たのはゴンだった。ゴンの釣り竿が頬に直撃したヒソカ。その一瞬の隙を見逃さず私は変態の腕の中から逃げ出した。ゴンが神様に見える。
「逃げちゃったか 残念◆やるねボウヤ 釣り竿?おもしろい武器だね ちょっと見せてよ」
ゴンに興味を示したのかヒソカは一歩一歩ゴンに近づいていく。
「てめェの相手はオレだ!!」
「やめろレオリオ!」
ゴッと鈍い音が鳴った。一足遅かった。レオリオはヒソカに豪快に殴られ宙を一回転してからその場に倒れた。
「レオリオ!おい、無事か!?」
ダメだ、完全に伸びてる。だがひとまず死なずに済んで良かった。
「大丈夫 殺しちゃいないよ◆彼も合格だから」
レオリオを心配する私に向かってヒソカがそう言う。ふざけるなと一言言ってやりたい所だったが確かにこんな状況で殺されなかっただけマシなのも事実。レオリオとヒソカではあまりにも力の差がありすぎる。
「んん〜〜 うん!君も合格◆いいハンターになりなよ◇」
「おい変態!ゴンから離れろ ついでに死ね」
「酷い言いようだね☆そこまで言われると流石のボクでも傷つくなぁ◇」
「そんな嬉しそうな顔して何が傷つくだ!いっぺん土に還れ」
「興奮するキミも可愛いよ 食べちゃいたいくらい、ね◆」
ゾワゾワゾワッ!と全身を虫が駆け登る感覚がした。
こいつは気持ち悪い事しか言えないのかと本気で疑いたくなる。その時、ピピピという機械音がしたかと思うとヒソカが四角い機械のようなものを取り出した。
”ヒソカ そろそろ戻ってこいよ どうやらもうすぐ二次会場につくみたいだぜ”
「OK すぐ行く◆」
再びピッと音がした。ヒソカは四角い機械をしまって立ち上がる。
「お互い持つべきものは仲間だね◇呼ばれちゃったからボクもう行くけどキミも一緒に来ない?レン」
「行くわけないだろ」
「残念◆」
「どうでもいいが行くならとっととおれの前から消えろ そしてレオリオを置いていけ」
当たり前かのようにレオリオを肩に担ぐヒソカの腕を掴んで動きを止める。ヒソカは突然目の前までやって来た私に驚いたような顔をして、どういうわけか素直にレオリオから手を離した。
「っと!おいレオリオ、だいじょうっ!!?」
レオリオに気を取られていると耳にぬるりとした感触を感じて思わず耳を押さえてその場から退く。感じたことのない感覚に顔が歪んだ。
「うん イイねその表情 感度も抜群そうだ☆」
か、感度!?感度っつったかこの変態…!ペロリと唇を舐めるヒソカにぬるりとした感触の正体を理解した私は罵倒の言葉を機関銃の如く掛けたかったがいかんせん変態に耐性がない為、私は口をパクパクと動かすだけで声が出ない。そんな私を見たヒソカが笑顔を浮かべながら自分の唇を指差して言う。
「おや、耳じゃなく唇がよかったかい?」
「うっ…!うう!!」
「キミの可愛い反応も見れたことだしそろそろ行くよ また後でね ボクのお姫サマ◆」
ヒラッと手を振ってヒソカが濃い霧の中に消えて行く。結局反撃も何も出来ず終わってしまったのが悔しい。
だが私はヒソカのお姫サマと言う言動にドキリとした。まさか、バレてないよな?
ゴンもクラピカもレオリオも、それにキルアだって私を男だと思ってるんだ。
出会ったばかりのヒソカにバレるわけが無い。それに奴だって特に私が女かどうか確認して来たわけでも無いし。そう思ってはいても私の内心はざわざわと落ち着かなかった。