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「はぁ…スシねェ」

二次試験の内容は料理だった。試験官二人の言う料理を作り、満足させるのが今回の試験だそうだ。

最初に指定された料理はブタの丸焼き。その材料となるブタをゴン達と狩りに行き、言われた通り丸焼きにして試験官に食わせるとあっさりと合格を言い渡された。そして次のお題が”スシ”である。


スシ…いや、寿司に必要なものは無論魚だ。来る途中川を見つけたが寿司と言えばやはり海水魚。そしてこのメンチという試験官は寿司のほとんどが海水魚だと言うことを知っててこの川が多い環境においてこのお題を出した。

つまり、試験合格のカギを握るのは海水魚。そうと決まれば海に行って魚を捕るしかない。すでに川まで行ってしまったゴン達とは別行動になってしまうがここは仕方がない。

「でもどうするかなぁ、おれカナヅチなんだけど」

最大の問題点に直面した。悪魔の実の能力者は海に嫌われている為、カナヅチであるのだ。それは海だけでなく川や風呂などを含めた水の溜まっているところ全てにおいて言えることだ。

「ま、とりあえず海行ってから考えるか」

難しいことは後回しにとりあえず海へ向かう。と、そんなことを考えている内にあっという間に海に着いてしまった。

「うーん、どうやって魚を捕るか…潜るのは論外だし」

「へぇ、スシには川魚じゃなく海水魚を使うのかい?」

「うわぁっ!!」

突然背後から耳元にフゥッ…と息を吹きかけられ私は飛び退いた。

「やあ★さっきぶりだね、レン。会いたかったよ」

「てめぇ、またお前か変態!っておい、こっち寄るな、そこで止まれ!!」

「どうしてだい?また会えたら再会のハグをするって約束したじゃないか◆」

「それはキルアと約束しただけであってだな!ていうかお前それどこで聞いてた!?ストーカーかよ」

「うん キミ専属のね◇」

ジリジリと迫ってくる変態もといヒソカ。奴と視線を交わせながら一歩、また一歩と後退りする。

「悪いことは言わねーからおれの前から消えろ じゃなきゃ痛い目みるぜ?」

「んーそれは聞けないお願いだ◆キミがボクに火をつけちゃったからね」

「寝言は寝て言え お前が消えないならおれが違うところに行く」

「ダメダメ 逃がさないよ◇ボクをこんなに興奮させておいて放置するなんてあんまりだろ?」

ヒソカはそう言うとゆっくりだった歩調を早めて一気に私に近づいて来た。何度も言うが私は奴のあまりの気持ち悪さに思考能力を遮られてしまう傾向がある。ヒソカから距離を取るために後ろを見ずに後ずさる。何か大事なことを忘れている気がしたが、気づいた時には既に遅かった。

「あっ…や、やば!!」

ボチャン!!

なんという事か、ヒソカに気を取られ海に落ちてしまったのだ。身体の力が一気に抜けて行く。何とかしてバチャバチャともがいてみるが足すらつかない海の中では能力者の私は為すすべもないただの生身の人間。

「ゴボッ!ぶあっ、く、そ…っ!力が…っ」

どうやら私は海に備え付けられていた飛び込み台の上から落ちたらしい。沈んで行く私をヒソカが驚いた顔をして見つめる。あいつ驚いた顔とかできるんだなとどうでもいいことを考えながら、ついに口の中にまで入って来た海水に私は意識を手放した。

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