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かぶっ!

「…!」

「わー 積極的」

「ほぉうは!くひかふぁれたあおはえあっていはいあろ!(どうだ!首噛まれたらお前だって痛いだろ!)」

ヒソカの首筋に噛みついてやった。腹いせに私は更に噛む力を強めた。ヒソカが目を大きく見開いて私を見下ろしている。ふっ、痛いか。痛いだろう!私は口の中に鉄の味が広がったのを合図に噛むのを辞め、同時にペッ!と口の中に入ったヒソカの血を吐き捨てる。

「おれ、やられたらやり返す主義なんだ それも倍にしてね」

「……クククククッ!今のはスゴくよかったよ◇嗚呼、いけない キミがこんなコトするから抑えられそうにないじゃないか◆」

「は…、お前…本当に頭大丈夫か?なんで笑ってんの」

何なんだ本当にコイツは。首から血出てんのになんで嬉しそうなの?本当にマゾだったの?

「コレがキミのつけたマークか… うん イイね◆」

不気味に笑いながら私のつけた歯型を指でなぞり、なぞった拍子に指についた自分の血を舐めるこの男に狂気すら感じる。

「無理ホントこいつ怖いんだけど なんとかしろよギタラクル」

「なんとかしろって言われてもね ていうかヒソカ、ソレがそんなに嬉しいわけ?」

ギタラクルの瞳がヒソカの首筋から下へ移動し、ある一点を見つめている。

「モチロン レンがボクにつけてくれたモノだからね。んーダメダメ、鎮めなきゃ★」

「うぎゃあーーーー!!!」

「うるさい 何なのいきなり」

ギタラクルの視線の先を辿ってしまい私はまた見てはいけないものを見てしまった。

「レンは本当にボクを興奮させてくれるね キミの怯えた表情カオが一番クるよ」

「もういやだ!ギタラクル、お願いだから助けてくれ」

「えーめんどくさい。あ。でもレンが一つだけオレの言うこと聞いてくれるならいいよ 助けてあげる」

「え、本当か?…ちなみにその言うことって?」

「レンがゾルディックになる事 職業柄オレの家、優秀な遺伝子が必要なんだよね」

ギタラクル…いや、イルミに聞いた私がバカだった。

「や、それなら無理」

「え どうして?」

心底不思議だという顔をするギタラクルにピクピクとこめかみが生き物のように動く。

「さっき言ったよな?おれは自分のしたいように生きるって」

「?うん。結婚してから自由に暮らせばいいじゃん」

「お前も話の通じねー野郎だな!そもそもその結婚っていうのがおれは嫌なんだ!それになんだよお前さっきから遺伝子遺伝子ってよ!人をバカにすんのも大概にしろ!」

「バカにしてないんだけど むしろ褒めてるよ」

「イルミはダメだなぁ◇女心っていうのが分かってないんだよ」

「イルミじゃなくてギタラクル。で、何がダメなわけ?」

「レンが怒ってる理由はギタラクルが生まれてくる子供がいかに優秀かしか考えてないからだよ◆」

「そうなの?」

「いや。確かにヒソカの言うことも一理あるけど一番の理由はおれが誰にも縛られたくないから それに出逢ってまだ1日も経ってないのに結婚とかありえねーよ する気もないし」

「ふーん そうなんだ 女ってメンドくさいね」

「それはこっちのセリフだ これに懲りたらもう諦めてくれよな」

「うん わかった。無理やりレンをゾルディックにするのは諦めるよ」

む、無理やり?無理やり私をゾルディックにしようとしたのかこいつ。まぁ無理だろうけどその考えがもう恐ろしい。

「ようは自分の意志でレンがゾルディックになりたくなるようにすればいいんだよね」

「ん?まぁ何にせよ無理やりってのはよくないな。おれがゾルディックになる事は人間がカエルを産むくらいの確率でないとは思うが」

「ククク!表現の仕方が斬新だね 人間がカエルを、か 気に入ったよ」

「ツボおかしくね?あーつまりおれが何を言いたいかって言うと、それほどありえないってことだ」

「レンの考えはよくわかったよ これからはオレなりの方法でやっていくから」

抑揚のない声でそう言われれば何故だかイヤな予感がしてならなかったがその先を考えるのがなんだか恐ろしかったので私は楽しいことを考える事にした。

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