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「生きて下まで降りてくることね…。つまり生きて下まで行ければやり方は自由ってことだよな?」

「そうじゃね?」

「ふむふむ」

三次試験会場に着き、このトリックタワーについての簡単な説明をしてからさっさと飛行船に乗って行ってしまった試験関係者達。

普通に能力使えば楽勝過ぎて鼻水が出そうな勢いなんだが、こんな楽な試験内容で大丈夫なのだろうか。しかも所要時間は72時間もある。クリアしたとしても暇すぎてどうにかなりそうなくらい時間を持て余す事は目に見えている。

「側面は窓ひとつないただの壁か」

「ここから降りるのは自殺行為だな」

ヒュオオオ!と強い風が吹く中、トリックタワーの頂上から下を覗く受験者達。その中で一人の男がまるでロッククライミングをするかのようにタワーを降り始めた。

それじゃあ私も早速。ぴょんっとジャンプしてタワーから飛び降りる。速度を調節してゆるゆると優雅に、そしてゆっくり降りているとキルアとゴンがタワーの上から顔をのぞかせた。

「あ、おいズリーぞレン!空飛べるからってよ!」

「はっはっは!キルア少年よ、すまないな。先にゴールして待ってるから気をつけてくるんだぞ」

「そっか、レンは空飛べるんだったね!しょうがないよキルア!」

「ゴン…!うん、なんかゴンには申し訳ないけど先行くな!」

「ゴンには申し訳ないってどういう意味だよ!クソ、ならオレだって…!」

私に続いて飛び降りようとしたキルアは何かに気づき、顔を真正面に向けた。

段々と近づいてくる鳥のようななんとも形容し難い生き物が私とロッククライミングの人に襲い掛かってくる。

「ほほう なんとも醜い生き物だな…」

私を心配するゴン達の声を聞きながら飛んで来た化け物達に向けて覇気をあて、威圧すると奴らは泡を吹いて呆気なく落下していった。あ、やばい。ロッククライミングの人も一緒に気絶しちゃった。

「今のってレンがあいつらを倒したのかな キルア。ーーキルア?」

「…(なんだ、今の…)」

ほんの一瞬レンの纏う空気が変わったことに瞬時に気づいたキルアはビリビリと伝わってくる強者の纏うオーラに目を大きく開いてこちらにピースを向けてくるレンを見つめる。

「えー、一つ言い忘れたことがあります。外壁を伝ってのクリア、または落下によってのクリアは合格とはみなしません 下まで降りてきたとしても失格とみなします」

「えええ!?マジ?そんな重要なことを今言うなよグリーンピース!!」

まだ近くに飛んでいた飛行船からグリーンピースの声が聞こえる。グリーンピースとはみんなご存知、あの緑のちっこい豆みたいな奴の事だ。

「レン!早く上がってこい 失格になるぞ!」

「一人だけ抜け駆けしようとするからだぜ!次からはオレも連れてけ!」

クラピカが心配そうに私を見つめてそう言う。本当にクラピカって出会った頃から変わらず優しい。その点、レオリオときたら…。この際レオリオの言葉は無視だ。

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