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「ちょ、おいヒソカ!お前わざとか!?」

私の避ける方とは正反対の方向に避けるヒソカのせいで手錠がミシッと嫌な音を立てる。

千切れそうな手錠に慌ててヒソカの方へ向かうと奴は不敵な笑みを浮かべて私を見ていた。このクソピエロが!という思いを込めて睨んでいると空気を裂く音が聞こえて視界の隅に目をやる。

ギュルルルッ!!と私に向かって武器が飛んできていた。

んん〜手は出さないって決めたけどこればっかりは仕方ないか。向かってくる武器を破壊しようと左手を動かそうとした瞬間、一気に視界がヒソカによって覆われた。

ザシュッ

「お、おいヒソカ!何のつもりだよ!?」

「何って、キミが怪我を負ったらいけないと思ってついね◆」

「バカ、今の余裕で避けられたクセにわざと避けなかっただろ!?お前本当にマゾなのか!?」

「イヤだなぁ レンを守ったっていう証が欲しかっただけだよ◇そうすればコレを見るたびに思い出すだろ?」

何を考えてるのか読めない笑みを浮かべてヒソカが肩の傷口を指差す。赤い液体が地面を濡らした。

「そんなバカげた理由で…っ!!」

「どんな形でもキミに思い出してもらえる要因さえできればボクはそれでいいのさ◆」

確かにこんな形でヒソカが怪我をすれば嫌でも何かの拍子で事あるごとに思い出すだろう。これは新手の嫌がらせか何かだろうか。

「くくくくく上下左右 正面背後!!あらゆる角度から無数の刃が貴様を切り刻む!!この無限攻撃をかわすのは不可能!!ははは苦痛にもがいてのたうちまわれ!!そして死ね!!!」

パシ
パシ

「!!」

「たしかによけるのは難しそう なら止めちゃえばいいんだよね◆」

「破壊するもよしだぞ」

「その手もあったね」

飛んできた武器を難なくキャッチしたヒソカは元試験官の見よう見まねでその武器を高速で回してみせた。すごいな、見ただけで再現できるなんて。

「なんだ 思ったよりカンタンなんだ。無駄な努力 御苦労様」

「ぐっ…くそォオーーーーー!!」

最後に悔しそうに叫び声を上げて元試験官兼復讐者の男はヒソカによってあっけなく絶命させられた。

「殺すなら心臓にソレぶっ刺して殺せばよかったのによー。首切るなよ ビジュアル的に気持ち悪いだろ」

「ごめんごめん☆そこまで考えてなかったよ レンは殺し方にもビジュアルを重視するんだね」

「んーそうなのかな?ただあんまりグロテスクなのは嫌だ」

「そうなんだ 覚えておくよ◇」

絶命した男を放置して先に進むと明るい光が私とヒソカを照らした。さっきまで暗かったから眩しい、まさかまた何かあるんじゃ…

「44番ヒソカ 3次試験通過第一号!!所要時間6時間17分。続いて406番 レン 3次試験通過第二号!!所要時間6時間17分」

合格のアナウンスが鳴ったと同時にヒソカと繋がれていた手錠がカシャンと音を立てて地面に落ちた。

「やったー!!やっと自由だ!」

「ボクはもっとキミと繋がっていたかったんだけどねェ」

「気持ち悪いこと…っ!!」

言うな、と続けようとした言葉はヒソカの肩の傷口を見て呑み込んだ。そういえば忘れかけていたがさっきあの元試験官の武器からヒソカに守ってもらったんだ。

別にあんなもの、守ってもらわなくとも一瞬で破壊できたが何はともあれヒソカが私の盾になり守ったのは事実。

「ヒソカ」

「ん?」

「その…さっきはありがとうな。っそれだけだ!」

「……っレン!本当にキミは可愛いよ◆」

「うわぁ!!後ろから抱きつくな、誰か助けてくれーー!!」

礼を言った瞬間、一瞬固まったヒソカだったが数秒後にはあの変態的な笑みをさらに深めてあろうことか後ろから私を抱きしめてきた。

突然のことに思わず誰かに助けを求めるような叫び声を上げて暴れる私を物ともせず、ヒソカは暫く私でいいように遊んでいた。ようやくクリアしたというのになんの罰ゲームだ!

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