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「それではこれからの2時間は自由時間になります みなさん船の旅をお楽しみ下さいね!」
案内人の女が話し終えると私はゴンと一緒に船の端っこの方に体育座りで座った。
「ゴン 大丈夫か?」
「うん やるしかないもんね」
「まぁそうだよな」
ゴンと私は既にカードの番号を見せ合っていた。私のターゲットは問題ないのだが、運命のいたずらかゴンのターゲットはあの変態奇術師ヒソカだったのだ。
今のゴンの実力ではどう足掻いても真っ向勝負でヒソカに勝つことはできない。ゴンは今何を考え、何を思っているのだろうか。
「よ 二人とも何番引いた?」
「お!キルア おれは197番だった」
「……キルアは?」
「ナイショ」
一瞬なんとも言えない沈黙が訪れた。聞いといてナイショなんかい!とは思ったが口には出さない。気まずさにすぐさまニカッと顔を見合わせて笑い合ったゴンとキルアには少年らしさが滲み出ていた。友達っていいな。
「安心しろよオレの獲物は405番でも406番でもない」
「ほっ…よかった」
「バーカ それはオレのセリフだっつーの」
「オレも99番じゃないよ」
「せーので見せ合いっこするか?」
「「せーのっ!!」」
二人同時にカードを見せ合う。キルアは199番か。うん、誰かわからん。
「……マジ?お前クジ運ないなー」
「こら そんな本当のことを言うんじゃありません」
「レン お前ゴンと変わってやれよ あいつと仲良いんだし」
「仲良くない!なんでおれがあんなやつなんかと…!!」
「はいはいわかったわかった」
「キルアの…これ誰の番号だっけ?」
「やっぱしわかんねー?他のやつの番号なんか全部覚えちゃいないもんな」
「おれは最初の方に引いたからターゲットが誰かわかったけどな」
「マジ?いいなー オレも説明聞いてから周り探してみたんだけどさーもうみんなプレート隠してやんの せこいよなー」
キルアの言い分に本当だよなーと相槌を打って、何故かゴンの反応がないことに私とキルア二人してゴンに目をやる。
武者震いをしながら遠くを見つめるゴンは私達の視線に気づいてハッと振り向いた。
「うれしいのか怖いのかどっちなんだ?」
「両方…かな これがもしただの決闘だったらオレに勝ち目はなかっただろうけどプレートを奪えばいいってことなら何か方法があるはず」
「…(そうか、何も真っ向勝負でヒソカから奪うだけが手じゃないのか)」
「今のオレでも…少しはチャンスがある そう思うとさ 怖いけどやりがいはあるよ」
「……そっか」
「ゴンは偉いな 自分より強い敵を前にしても立ち向かって行こうとするなんて。まさに男の鏡だよ」
「へへ、そうかな?」
「ああ。な、キルア」
「……そーだな。ま がんばろうぜ。生き残れよ ゴン、レン」
「おう キルアもな(なんだ?様子が…)」
自分が相槌を求めた時、キルアの様子がどこかおかしい事に気付いたレンは何か変な事を言ってしまっただろうかと頭の中のメモをペラペラとめくった。だが特におかしな事は言っていない。
その一方でキルアはレンの言った言葉に兄にいつも言われ続けていた”勝ち目のない敵とは戦うな”という言葉が暫く頭にこびりついて離れなかった。