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「んー…まずどこから行こう こうも気配が多いと特定は難しいんだよな」
島の中に入って暫く経った。既に受験者全員がもうこの森の中だろう。
とりあえずターゲットの197番を探さなくてはならない。
そうと決まれば適当にそこら辺を散策してみよう。……と思ったのだがここ数日お風呂に入れなかった為、私は直ぐにでもお風呂に入りたかった。とは言えここは無人島。お風呂なんて設備があるわけもない。
もう川の水とかでもいいからとにかく水を浴びたい。私は一時プレート集めを中断して水浴びできそうな、それでいて人気がなさそうな所を探した。
そして暫く歩いていると前方に小さな川が見えてきた。
「ラッキー!水も澄んでて綺麗だ」
チャプッと指先を川の水につけて遊ばせる。水の表面では太陽の光が反射してゆらゆらと揺れていた。
早く身体を洗いたい。早速服を脱ごう、と服に手をかけようとしたときに問題が起こった。
「…そういえばこれどうやって脱ぐんだ?」
そう、ヒソカの能力で作ってもらった服の脱ぎ方がわからないのだ。これは困った。試しにワイシャツを脱ごうと袖の部分を引っ張ると服がねちょっとした物体に変わって肌から離れた。
「なんだ、このねちょってしたやつ」
だいぶねちょねちょはしているがこれなら脱げる。中々脱ぐのに苦戦してようやく全てを脱いだ頃には見るも無残にボロッボロになったヒソカ作の服が。少し罪悪感を感じながらも川のほとりにそっとそれを置いた。せっかく作ってくれたのにすまん、ヒソカ。
「ふぅ…気持ちい」
能力者な故に一気に全身は浸かれない。その為川辺で座りながらまず髪を洗った。ちなみに今の格好はサラシすら取っていてパンイチだ。
お風呂とはいかなかったが私はそれなりに満足して鼻歌を歌っていた。
そんな時事件は起こった。
「……レン?」
「……え?」
「おまっ…!!お、女!?」
「お!キルアー!」
「うわぁあ!バカ、そんな格好でこっち来んな!!」
ひょこりと木々の間から顔を出したキルアは目をまん丸くし、私を指差して固まった。やべ、バレたか。まぁいいや。
さっきまで一人で何気に寂しかった私は思ってもみなかった再会に嬉しくてすぐ様立ち上がると茹でたタコのように赤い顔をしたキルアに走り寄り、その身体を正面から抱き締めた。
「バカ!お前抱きつくなって言っただろ!」
「それは男だったときの話だろ?今は女だぞ」
「…お前、は、恥ずかしくないのかよ!(なんか頭に乗ってる!!)」
柔らかい二つの何かが頭の上に乗っている感触にキルアは更に顔を赤くした。
今まで男だと思っていた人間が実は女だったなんて誰が思っただろうか。それも例え男でも女でも顔の造形がいい人間であるから余計にタチが悪い。
とりあえず絶対に見ないようにとキルアは固く目を瞑った。