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「なっ!?」
「ふぁああ…あれ?蚊でも止まったのか?」
「さっすがー」
手のひらで難なく受け止めた拳にギリギリと力を入れる。男の顔がどんどん青くなっていく様子を見ていると、ゴキリと鈍い音が響いた。
「ってぇえええ!!いてぇよ兄ちゃん!!」
「てめェよくもオレ達の弟を!」
「ふざけたマネしやがって!」
「あー大丈夫だ 骨は折ってない。関節外しただけだから。ーーんで、ここからが本題なんだけど大人しくプレート渡す気はないか?」
私が親切にそう尋ねたやったにも関わらず三兄弟は負傷した一人を除いて私とキルアの周りを囲みはじめた。物分かりの悪い奴らだ。
「交渉決裂か。残念だ」
ブワッ!!!
「……っ!!」
バタ…バタッ
私とキルアを囲んでいた二人が白眼を剥いて倒れ、関節を外されたもう一人もその場で気絶したまま動かなくなった。このぐらいのレベルで気絶じゃたかが知れてる。
私はなぜかぼーっとその光景を見つめているキルアの背中を叩いた。
「さ、キルアぼーっとしてないでプレート取ろうぜ」
「ああ…」
声をかけられてキルアがハッと我に帰り、二人して気絶した奴らの荷物を漁る。すると出てきたのは197、198、199の三枚のプレートだった。
「やりぃ!これで6点だ!キルアもだろ?」
「まぁな」
「運がいいなおれ達 初日でもう6点揃っちまったぜ」
いやー大漁大漁!と喜んでいるとキルアの真剣な眼差しと目があった。お、お?なんだ、そんな真剣な顔されると驚くじゃないか。
「レン、お前何なんだ?」
「え…?いや、何なんだと言われてもな 人間だけど」
「バカ!そういうことを聞いてんじゃねーよ!このトンチンカン!」
「トンチンカンだと!?おいキルア、ひどいじゃないかそんな…泣くぞ?」
「なんで一歩も動かずにあいつら倒せたんだよ どう考えたっておかしいだろ」
どうやらキルアは”覇気”の事を言っているんだろう。驚くのも無理はないか。いきなり敵が白目剥いて倒れたら。
「今のは”覇気”って言ってな 簡単に言うと相手を威圧する能力なんだ。いや、違うな…能力っつーか身体に備わってるものっつーか…まぁ要するに気迫だよ」
「気迫?」
「そ。動物世界で言う威嚇みたいなもんだな 納得したか?キルア君よ」
「少しは……ってなんだよキルア君って!気持ち悪いから君つけんのやめろ」
「ごめんごめん。ーーっと。そろそろ出てきたらどうだ?そこ…木の後ろに隠れてるあんた」
キルアとふざけながらも感じる気配にそう言うとキルアが「え?」と不思議そうな顔をする。
そして木の後ろから出てきた人間に私はニヤッと笑った。私から隠れようなんて100年早い。
そして隠れていたやつを見て私は鳩が豆鉄砲を食ったような間抜け面を晒した。
な、なぜこんなところにギタラクルが…!?
私はキルアとギタラクルを交互に見た。
「おかしいな 完全に気配を絶ってたからバレるわけないんだけど」
言いながら一歩一歩私たちの方へ歩み寄ってくるギタラクルの声は勘違いでなければどこか楽しそうな声色を含んでいた。