12
「ううう!寒い!!」
ただ今ローと二人でルフィさんの所へ向かう最中。今度はちゃんと上着を着ているんだけど、上着を着ていても寒い。全然寒い。あまりにも寒いので髪の毛をマフラー代わりにしながら歩く。
「サラ」
「ん、なぁに?」
「最後にもう一度だけ確認しておきたい事がある」
「うん」
「おれがこれから何をしようとしているかは知ってるな」
足を止めて静かにそう言ったローに私もその場で立ち止まって質問に答える。
「知ってるよ」
「一度歯車を壊せばもう二度と後には戻れねェ。おれの目的はドフラミンゴを討つ事だ。成功率は正直言ってかなり厳しいだろう」
「…そうだね」
「五体満足でいられる可能性どころか生き残れる可能性すら低いこの”賭け”にお前を巻き込む訳にはいかねェ」
「…!!」
「本来ならそれがお前にとって最善の方法なんだろう。頭では考えたがどうにも上手くいかねェ。現にこの島にお前を連れて来ちまってる。サラ、お前の考えを聞きたい。もしお前が少しでも嫌だと思ってるならおれは」
一方的にどんどん進んで行く話に一瞬訳が分からなくなる。ローの言葉の意味を理解して私はまだ何かを言いかけている最中のローに構わずその場で大きな声を出して遮った。
「ローのバカ!今更私がローから離れると思ってるの?そんなの…っもう無理だよ!」
「……」
「私は何があってもローについて行く。ローのいない人生なんて絶対嫌!お願いだから私をひとりにしないで、ロー」
勝手にポロポロと溢れ出て来た涙を手でごしごしと擦りながら言い切るとふわっと頭にローの大きな手が乗った。相変わらずあまり表情は変わらないものの、見上げると優しい顔をしたローがいた。
「そこまで言うなら仕方ねェ。険しい道のりになるがそれでもいいな?」
「いいよ!ローと一緒にいれるなら若様だって怖くない」
「…!そうか。ーーならおれは命ある限りドフラミンゴの手から全力でお前を守る。勘違いしてるようだから最初に言っておくがこれはコラさんの頼みだからじゃねェ。おれの意志だ」
「え……?」
「当たり前だろう。いくら頼まれたからって命かけて守れるもんと守れねェもんぐらいある」
今までローが私の面倒を見て来てくれていたのはコラさんの頼みがあってだからだと思ってた。それが私にとって少し寂しかった。だけどそれは私の勘違いだった。ローは自分の意志で私を守ろうとしてくれていたんだ。それが嬉しくて一度止まった涙がまた溢れ出す。
「コラさんの本懐を遂げる為、そしてお前をドフラミンゴの手から自由にする為におれは今まで生きて来た」
「そんなの、知らなかったっ…!!ローがそんな事考えてたなんて」
「お前にはコラさんの話しかしてなかったからな。言えばお前は自分を犠牲にしてでも止める。それが分かってたから言わなかったんだ」
「当たり前だよ!ローにそんな危ない事して欲しくないもん」
「復讐を果たすと決めた時から覚悟はできてる。お前は何の心配もしなくていい。ただおれについて来てくれればそれ以上何も望まない」
「…っロー」
「もう何も考えるな。お前は黙っておれについて来ればいい。それ以上でも以下でもない」
私の頭に手を乗せながらローは私の背丈に合わせて少し屈むとまるで幼い子を宥めるように目を合わせてそう言った。それになんだか安心して私の首はコクリと頷く。そして例の如くローの背中に手を回して抱き付いた。