01
「ロー!ここにいたんだね」
ローの姿を見つけた途端トコトコトコっと可愛らしい足音を立ててサラが走る。
「サラ…!おい、走って来るな」
コテンッ
言ったそばから何もないところで躓き、転びそうになるサラを難なく受け止めたローは腕の中にすっぽり収まる彼女を見て眉間にしわを寄せた。
「だから走るなと言ったんだ。お前のドジはコラさん並みだ。気が抜けねェ」
「えへへ、コラさんに似てるなら私ドジでもいいや!」
「よくねェ。毎回ハラハラするこっちの身にもなれ」
「大丈夫だよ。だってローが助けてくれるもん」
ローは私のヒーローだもんね!とあどけない笑顔でそう言うサラにローはフイッとそっぽを向いた。
「さァな。第一ヒーローなんてガラじゃねェ」
「私にとってはヒーローなの。これからもずっと!」
白いふわふわのワンピースを身に纏いサラはギュッとローの腕に抱き着く。すりすりと猫の様に頭を腕に寄せて来るサラにローが僅かに頬を緩めた。だがしかしこの無防備さはいただけない。ローは完全に安心しきった表情のサラを見て満足そうな顔をするとどこかに向かって歩き出す。
「ロー?どこ行くの?」
「シーザーのとこだ。面倒な事にならなけりゃいいが」
「面倒な事…?」
「何かのはずみでドフラミンゴにおれ達の事がバレれば厄介な事になる。それは絶対に避けなきゃならねェ」
本当の目的に近付くまではな、と一言付け足すローにサラは再びシュンと肩を落とす。
「お前の為でもあるんだ。ドフラミンゴはどうにかお前を手中に収めようと狙ってる」
「若様が私を…?」
「ああ。あいつからお前を守るのはコラさんとの約束だ。絶対にその約束だけは違わせねェ、安心しろ」
「…うん」
複雑そうな、悲しげな表情を浮かべて頷いたサラの心境をローは知らない。コラさんとの約束がなければもしかしたらローは自分といることはなかったのかもしれないからだ。
「サラ」
「んー?」
「シーザーもそうだがモネにも気を抜くな。まだ何者なのか得体が知れねェ」
「モネさんも?優しくて好きなのに…」
「それでもだ。いいか、この島においてお前が信頼していいのはおれだけだ。よく覚えておけ」
「うんわかった!私はローの事しか信頼しませんっ!」
「それでいい。ーーそれともしもの時のために常にこいつを持ってろ」
そう言って手渡されたのは小型の電伝虫。いつも見るタイプの電伝虫より一回り小さいそれはサラのワンピースのポケットにちょうど収まった。
「鳴らせばおれに繋がる。もしもの時の緊急用だ」
「えへへへ、ローは優しいね!心配してくれるんだ」
「お前に危機感ってもんが備わってねェからだ。とにかく何かあったらすぐ鳴らせ」
「うん。ありがとうねロー、大好き!」
離れたと思ったら今度は正面から抱きついてくるサラにローが顔をひきつらせる。だがなんの恥ずかしげもなく抱き付いて来るサラにモヤモヤと考えている自分が馬鹿らしくなったローはその頭をポンポンと撫でるとシーザーのいる研究室に向かった。