02
「こんにちはモネさん、シーザーさん」
「あら、サラ。こんにちは」
「シュロロロロ…よく来た。ここに座れ」
ローと一緒にモネさんとシーザーさんのいる研究室に着き、ソファに座るとモネさんがオレンジジュースを出してくれた。やっぱりモネさんは優しいしお姉さんみたいだ。シーザーさんはよく分からないけどいつも面白い顔をしていると思う。
「大体の検討はついてる。一体おれは何をすればいい」
「理解が早くて助かる…!知っての通りだ、よりによってスモーカーの野郎が来てる。それを追い払って欲しい。軍の者達を消すと足が付いて厄介だ…!」
「追い払う、ねェ。善処はする。話はそれだけか?」
「ああ。もう一つ…シュロロロ、サラの血を実験の材料に使いてェんだが」
「…何の冗談だ」
「シュロロロロ!!冗談なんかじゃねェさ、生まれつき治癒能力がある天使の血…!実験すりゃ必ずとんでもねェ結果が出て来る」
「一つ忠告しておく。こいつに関して何かしようモンならその時はーーお前ら二人とも、それ相応の覚悟をしておけ」
いつもに増して目つきを鋭くさせたローがモネさんとシーザーさんを睨む。ローは立ち上がって私の腕を取ると研究室から出て行った。
「うふふふふ!あの子の事になると怖いのね」
「そのうちジョーカーに奪われるってのにな!シュロロロロ!!」
ーーーーーーーーーーーーー
「ロー?怒ってるの?」
「………」
「あ、怒ってる。別にさっきのシーザーさんが言った事私何とも思ってないよ?」
ローに腕を引かれながら顔を覗き込むとグイッと腕を強く引かれて目の前に立たされた。顔がすごく怒っているのに怖いと思わないのはローだからだと思う。小さい頃からお兄ちゃんみたいに優しいローだから怖いと思わないんだ。きっと。
「もう少し自分の心配をしろ…!でなきゃおれの身が持たねェ。お前にまで何かあったらおれは自分を許せねェ」
「ご、ごめんねロー。気をつけるようにするよ…!でもね、やっぱりローといると安心しちゃって気が抜けちゃうの」
おずおずとローを見上げれば無言のまま私の話を聞いてくれた。
「私、小さい頃からローと一緒だったでしょ?お兄ちゃんみたいですごく嬉しかったの。今だってそうだよ。いつでも守られてるみたいで安心しちゃうんだ」
コラさんが私たちを守って死んじゃった日、ローは泣き止まない私を何日も抱き締めていてくれた。自分だって悲しくて泣きたいはずなのにずっとずっと。それが暖かくて、守られてるみたいで安心できた。私のもう一つの居場所が出来て嬉しかった。ローとずっと一緒にいたいと思ったから今も一緒にいる。それが心地よくて自分の心配をするよりローや仲間達の心配をする方が多くなった。
「お前の危機感がねェ話は今に始まったことじゃねェが、そうか。ならおれが今まで以上にそばにいて面倒みてやるしか方法がねェ」
四六時中一緒にいる事になる。嫌だなんて言わせねェぞと言うローに私は笑顔になる。嫌なわけがない。ローは私にとって一番大切な人なのだから。
「えへへー!うん、ローとずっと一緒にいる!寝るときも一緒ね!」
「バカか。寝るときは別々だ」
「えーなんで!前は一緒に寝てたのに…」
ぶーぶーと文句を言うサラにローは何年前の話だ、と頭を抱えた。お互いあの頃と体格や体つきが違う今、一緒に寝てもみろ。サラの一緒に寝よう発言に頷きそうになったローはサラのこの無防備さを何とかしなければと口を結んだ。