03



「ここ、どこだろう…」

シーザーさんとモネさんがいる研究室を出てからローはスモーカーさんという人を追い払う為に研究所の入り口の方に行ってしまった。私も一緒に行くと言ったら絶対にダメだと言われて研究所内のローの部屋に連れて行かれた。

ローがスモーカーさん達を追い払いに行って数分、つまらなくなってしまって私はローの部屋を出て研究所を散策していた。そして今に至る。見覚えのないところまで来てしまったのに今更になって気づいて不安になる。またローに怒られちゃう、どうしよう。

ドタドタドタ!!
バタバタバタ!

「…わ!誰…!?」

騒がしい足音のする方に目をやると私は自分の目を疑った。確か研究所の中はシーザーさんとモネさん、それにロー、私。あとはシーザーさんの部下の人しかいないはずなのに。

「んナミすわぁ〜ん!ガキ共と走る可憐な君も好きだ〜!!」

「サンジ!もう来たのか、しっかりナミは守ったぞ!ハチャ〜〜!!」

ここから見えるのは走ってくるタヌキさんみたいな動物とオレンジの髪の女の人と金髪の男の人。それにロボットと大きな子供達。そして生首…?だんだんと近づく足音にビクビクしていると角を曲がったところで私は何かにぶつかって転んでしまった。

ドテッ

「いたっ!」

「おっとすまねェ!急いでるんーーってこんなところに美女ォオオオ!!!」

「ちょっとサンジくん!?」

「お、おいサンジ!鼻血…!もうお前の血液型のストックはないんだぞ!?」

「むっ!なんと別嬪な女!しかし乳バンドではないのか」

「ア〜ウ!ずいぶん小綺麗な女じゃねェか」

私とぶつかった金髪の男の人は足を止めて一言謝ってから横を通り過ぎるかと思いきや目を合わせた途端その場から思い切り吹っ飛んで鼻から血を出して倒れてしまった。突然の出来事にひっ!と小さな悲鳴がもれて、私はその悲鳴と共に翼を広げて空を飛んでいた。

「…っ!」

「あの子、空飛んでるわよ!?」

「ほ、本当だ!すげェな!羽がついてるぞ!」

「も、もしやあの女子、天使か!?」

「天使!?そりゃスーパーじゃねェか!だがそれにしちゃ随分デケェ翼だな」

「あ、あの子は天使…!?天から舞い降りて来たおれの天使…!!」

「サンジ!気づいてよかった。本当に天使なのかわからねェけど飛んで行っちゃったぞ!」

「追うぞ野郎ども、まだおれの天使にぶつかっちまった謝罪をしてねェ!レディに対してあるまじき行為だ!」

「そうね、あの子もこの子達と同じで助けを待ってるのかもしれないわ!見失わないうちに急ぐわよ!」

「はぁ〜いナミさーん!!」

サンジ達はサラの消えて行った方角に向けて再び走り出す。そしてそんなサンジ達から逃げるサラ。

サラは研究所内を飛びながらローがいるであろう研究所の入り口に向かっていた。

「こ、怖かったよ…!ロー、どこ…!?」

バサッバサッと大きな翼をはためかせながらローを探す。そんなサラの瞳に一筋の光が見えて来た。あれは研究所の入り口だ。あそこにローがいる。

大好きな人の後ろ姿が見えて安心して、私の目から生理的な涙が溢れる。その時の私は勢いなど考えずに翼を広げた姿のまま後ろからローに抱きついた。

ボフッ!

「話が済んだら帰っ…!サラ…!?」

「ぐすっ…!ロー、怖かったよ〜!いろんな人が追いかけて来て、怖くて!」

「おい、どういうことだサラ。おれの部屋にいろと言ったはずだが」

「うう…ごめんなさい。つまらなくて研究所の中を歩いてたら知らないとこまで来ちゃって…」

私がそう言うとローは私のおでこをピンッと指で弾いた。

「いったぁい!!ロー!痛いよ!」

「うるせェ。約束を破った罰だ。ーーしかし生憎今はそんな事をしてる場合じゃねェな」

「え?」

ローの視線の先を辿るとズラァ!と海軍の人達が勢揃いしていた。確かローはスモーカーさんという人を追い払いに行った…ということは今私はすごい大変な場面に乱入して来ちゃったのだろうか。海軍の人達とローの目の前にいる煙草を二本吸っている白い髪の男の人。恐らくこの人がスモーカーさんなのだろう。彼は私を見ると目を見開いて驚いたような顔をした。そして視線を私の横に移し、スモーカーさんは鋭い目つきでローを睨みつけた。

約束を破ってごめんなさい、ロー。それと面倒なことになってしまってごめんなさい。私は睨み合う二人を見ながらそっとローの背中に隠れた。


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