09
「遅かったじゃねーかよ、どこ行ってたんだ?」
「あ、うん。あのね、すごいヤバイ人に会っちゃったの」
「は?ちょっとよく理解できねーんだけど」
「なんじゃなんじゃ、俺も聞きたいぜよ」
教室に帰るとまだ授業は始まってなかったみたいでひとまず安心する。隣の席の丸井くんは私の回答に不思議そうに首をかしげる。その様子を見ていた仁王くんも私達の方に近づいてきた。
「聞いて驚かないでね?その人会ったこともないのに私のこと知ってたの」
「あーまぁお前めっちゃ可愛い転校生が来たってすげぇ騒がれてたからな」
「確かにまるでハリウッドスターが来たぐらいの騒ぎ方じゃったのう」
「え?そうなの?みんなして美的センスおかしいんだね…」
「お前さんの美的センスがおかしいんじゃ」
「俺も思ってたぜぃ。相当鈍いっつーかなんつーかな」
「おかしくないよ!あ、それでね、まだ続きがあるの!!」
「なんじゃ、お兄サン達に言ってみんしゃい」
「うん。更に驚くことに、いきなりスリーサイズを教えてくれって言われたの!なんかデータ集めるのが趣味って言ってて、私怖くて走って逃げたんだよ」
私があの時のことを思い出してブルッと震えていると丸井くんと仁王くんが顔を見合わせてコソコソと話している。
「絶対柳の事じゃな」
「だよな、俺も思った」
「ねー二人とも聞いてる?私の話」
「おー聞いてる!で、逃げてどうなったんだよ?」
「そう、逃げたんだけどすっごく足速くて追いつかれちゃったの。それで叫ぼうとしたら手で口塞がれて私もう死んじゃうのかと思うぐらい怖くて」
「お、おう。で?」
「それで授業始まっちゃうから教室帰るって言ったら引き下がってくれたんだけど、去り際にすごい事言ったの。絶対あの人エロ魔神だよ」
「ぐっ…!ふっ、なんでエロ魔神なんじゃ?」
仁王くんが堪え切れないように笑い出す。私面白い事話してるわけじゃないのになんで笑ってるんだろうという事は置いておく。
「その胸では肩が凝るだろうって言って来たんだよ。もう私あの時は本当に危機を感じたね」
立海って怖い人もいるんだね〜としみじみと考えていると丸井くんと仁王くんの視線が私の胸辺りに注がれる。
「な、なに?」
「瑠衣ちゃん」
「?」
「男はみんな女子のおっぱいを見たいもんなんじゃよ」
「なっ…!!」
「それに瑠衣ちゃんはかなりおっぱい大きいからの、自然と視線がいってしまうんよ。こーんな可愛い顔してるブンちゃんだってそうじゃ」
「は、何言ってんだよぃ仁王!別に見てねーし、俺は!!」
「ほーれこんなに顔が赤くなっとる。これでわかったじゃろ瑠衣ちゃん、男はみんな狼じゃき」
高校生の男の子ってみんなこんな感じなのだろうかと私は放心した。みんなしてエロいことしか頭にないのだろうか。そこまで考えて私は頭を振った。いや、そんなことはない!お兄ちゃんや幸村くんは絶対にエロくなんかない。だってお兄ちゃんは凄い優しいしかっこいいし頼りになる。幸村くんだってかっこいいしとても優しい。
仁王くんとさっきの柳くんって人が特殊だっただけだ、と自己完結した時ちょうど先生が来て授業が始まったので私は席に着いた。