04
「へー!じゃあ瑠衣は俺らが立海で初めての友達ってことか」
「うん、丸井くんと赤也くんと幸村くんが私の初めてのお友達だよ」
「なんか初めてって嬉しいっすね!」
「そうだね、跡部さんの初めての友達になれて光栄だよ。何かわからないことがあれば遠慮せず俺たちを頼ってね」
「何から何までありがとう幸村くん…!丸井くんと赤也くんもこんな初めて会った私と友達になってくれて、すごくすごく嬉しい」
なんていい人たちに出会ったんだろう。氷帝の皆やお兄ちゃんから離れてやっていけるかすごく不安だったから今涙が出そうなくらい嬉しい。
「はー!もうなんなんすか瑠衣先輩!!いちいち可愛いこと言い過ぎっすよ!」
「え、ええ!?可愛いなんてそんな!赤也くんってお世辞お上手なんだね」
「いや赤也はお世辞とか言えるほど器用な奴じゃねーぞ?」
「そーっすよ!信じられないなら俺、何回でも言いますよ!先輩かわ」
「わ、わかったよ!ありがとう赤也くん。でも可愛いの安売りはダメだよ?本当に好きな子が出来た時にとっておかなきゃ!」
「ーーふふっ、跡部さんって面白いね。可愛いの安売りか…。だって。気をつけるんだよ?赤也。それに丸井も」
「俺もかよぃ!」
「丸井先輩も怪しいっすからね!」
「なんだとこのヤロー!」
「うわわ、やめてくださいよ!」
丸井くんと赤也くんがわちゃわちゃと暴れ出すのに朝から元気だなぁと感心しながら幸村くんの隣を歩く。ちなみにいい加減恥ずかしかったので幸村くんに本当にもう大丈夫だから、と交渉すればすんなりと降ろしてくれた。
「じゃあまず行く場所は職員室だね。迷子になったら大変だから職員室まで送るよ」
「ま、迷子!?流石にこの歳になって迷子にはならないよ〜。でも私ももう少しみんなといたいからお願いしようかな」
「嬉しいこと言ってくれるね、跡部さんは。喜んで送らせてもら」
「これでトドメっすよ丸井先輩!!」
「うおっ、ばっ!やめろ赤也!!」
丸井くんの少し焦った声が聞こえて、私が二人の方を振り向くより先に物凄い衝撃が私を襲って来た。冷静に分析する暇もなく傾く私の身体をとっさに誰かの腕が引っ張った。
ドサッ!!
「うっ…いってぇ…、あ!!ケガとかないっすか瑠衣先輩!!」
「…びっくりしたぁ。うん、赤也くんが守ってくれたから大丈夫。それより赤也くんの方が…」
どうやら丸井くんとふざけてバランスを崩した赤也くんと共に私は倒れたらしい。
すかさず私の心配をしてくる赤也くんに大丈夫だと返事を返した。私の下敷きになるようにして倒れた赤也くんが心配で怪我がないかと彼の手を取って確認する。
「へへ、大丈夫っすよこれくらい!かすり傷一つないっす!!」
「本当?それならいいんだけど…」
「ったく何やってんだよぃ赤也は。瑠衣は本当に大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫!ありがとうね丸井くん」
「怪我がなくてよかったよ。ーーーところで赤也、いつまで跡部さんとそうしてるつもり?」
「え?あ!!すんません瑠衣先輩!」
幸村くんに言われて状況を確認すると、私は倒れた赤也くんの上に馬乗りになって乗っかっていたのだ。倒れた衝撃と赤也くんの怪我の有無に夢中で気づかなかったけどかなり恥ずかしい格好をしている。頬が赤くなるのを感じていると寝そべっていた赤也くんの上半身が起き上がったが故に更に距離が縮まった私たちはぱっちりと至近距離で目があってしまった。
「…っ!!」
「うわっ…!」
「…赤也ー。後輩のくせに先輩の前で盛ってんじゃねーよ」
「ふふ、本当にね。赤也がそんなに俺を怒らせたいだなんて知らなかったよ」
「ち、違いますって!!!これは不可抗力っつーやつっす!」
「はぁ?ならなんでデレデレ鼻の下伸ばしてんだよぃ!」
「へぇ、そんなに赤くなるなんて跡部さんで何か妄想でもしてたの?」
笑っているのに目が笑ってないというのはまさに今の幸村くんのことを言うのだろう。ていうか私で妄想ってなんだろう。私で何を妄想するのかわからないけど、目の前の赤也くんが幸村くんを見て生まれたての子鹿さながらプルプル震えているので少しかわいそうだった。