05

「おーい、静かにしろー」

あの後私は職員室まで送ってくれた3人と別れて担任の先生の指示に従って教室の入り口で待機している最中だ。転校生恒例の自己紹介にドキドキと心臓が早くなる。

「じゃあ入ってきていいぞー」

緊張しながら扉を開けて教室の中に足を踏み入れるとクラス全員の視線が一斉に私に向けられた。

「は、初めまして!今年度から転校してきました跡部瑠衣です、よろしくお願いします」

シーンと静まり返っているクラスメイト達に、何かやらかしてしまったかと不安になりそうだったその時、聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。

「瑠衣!」

「え…?あ…!!丸井くん!?」

「よ!さっきぶり。てか同じクラスとかやっぱり俺って天才的だろい!」

「なんだ、跡部と丸井は知り合いだったのか?」

「そゆこと!なんたって俺は瑠衣の友達第一号だからな!」

「そうかそうか。仲が良いことはいいことだな。よし、じゃあ跡部も最初は不安だろうから席は丸井の隣でいいな?」

「え、いいんですか!?」

「ああ、最初は友人の近くにいた方が安心するだろうしな」

「マジかよぃ!っしゃ!先生たまにはいいことするじゃん」

「たまにはは余計だ。じゃあHRはこれで終わりだ。仲良くするんだぞ」

先生が出席簿を持って教室から出ていった瞬間、ババババッと目にも留まらぬ速さでクラスメイト達が私の机の周りを囲んだ。いきなりどうしたんだろうか。

「跡部さんすごい可愛いね!モデルとかしてるの!?」

「ハーフっぽい顔してるし、もしかしてどこかの国のお姫様とか!?」

いやお姫様ってなんだよ。と心の中でツッコミながら質問全てに返事をするが一向に私を取り囲むクラスメイト達は後を絶たない。立海には転校生を取り囲むという歓迎の仕方があるのかと疑いたくなるほどだ。

「あ、跡部さん!彼氏とかいるの!?」

「俺も知りたい!いるの??」

「ちょっと男子ー!跡部さ、瑠衣ちゃんが困ってるでしょ!」

「うるせーよお前に関係ねーだろ!」

なぜ跡部さ、と言いかけて名前を呼んだのかはいいとして、突然私の眼の前で繰り広げられる女子対男子の言い合いに驚いてオドオドしていると隣にいた丸井くんが私の手首を掴んだ。

「?」

掴んだと思ったら私の顔を見つめてニッと笑うと彼はなんの前触れもなく教室から走り出した。当然手首を掴まれている私も丸井くんについて行く形になる訳で。

「ま、丸井くん!どこいくの?」

「ついてからのお楽しみっつーことで、飛ばすぞ!」

クラスメイトの驚く声を聞きながら丸井くんに連れられて廊下をものすごい速さで走る。途中、廊下を走るなどたるんどるっ!!と野太い声が聞こえたのはきっと気のせいじゃないのだろう。

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