06
「はぁ、はぁっはぁ…ま、丸井くん」
「ここまでくりゃもう追ってこねぇだろぃ!」
「あの、なんで…?」
「ん?だってお前困ってそうだったからよ」
確かに質問に答えたのに減らない、というかさらに私の周りを取り囲むクラスメイト達が増えて、単純に歓迎されているんだと嬉しい反面、あまりの多さにびっくりして困っていたのが正直なところで。
「ありがとう、丸井くん!クラスのみんなに歓迎されるのは嬉しいんだけど確かにどうしたらいいかわからなくて…」
「ま、お前そういうの面と向かって言えなさそうだもんな!しょうがねーからこの俺が面倒見てやってもいいんだぜい」
「ふふふ!じゃあお願いしようかなぁ」
「おう!任せろ。クラスのこと以外でもなんかあったら頼れよ、力になるぜぃ!」
そう言ってニコッと笑って顔の横でVサインを決めた丸井くんはとても可愛くて、思わず頭を撫でたくなる衝動に駆られる。男の子に可愛いなんて言ったら怒るよなぁと思って言葉を飲み込もうとした時、ガチャリと背後でドアノブを回す音がした。
「ほーぅ?なら俺も頼っていいかの?ブンちゃん」
「お、おま…!仁王!?なんでここにいんだよ!!」
「丸井くんの、お友達?」
「そーじゃよ、転校生の跡部瑠衣ちゃん」
「え、なんで私のこと知ってるの??」
「ヒドいのう…俺もブンちゃんと同じB組じゃき。気付いとらんかったなんてショックナリ」
「っておい仁王!!そんなんはどうでもいーからなんでお前までここにいるんだよ!」
「面白そうだったから着いてきたんじゃ」
「はぁ!?お前なぁ…。あー瑠衣、こいつの事は別に気にしなくていいからな!」
「でも丸井くんのお友達なんでしょ?面白そうだったから着いてきたって、なんだか可愛いよね。仁王くん、だっけ?ふふっ丸井くんのこと好きなんだね!」
面白そうだったからという理由で丸井くんと私の後をつけてきた仁王くんは、その一言を聞いて丸井くんと同時にピシリと固まった。あれ、私ってばまた何かいけないことを言ってしまったのかと不安になっていると丸井くんが仁王くんのことを見てズザザァ!っと後ずさる。
「うげぇええ!!!やめろよ瑠衣!仁王が俺の事好きとかきもちわりぃ!!」
「俺も流石に気持ち悪いナリ…。瑠衣ちゃんがそんなこと言うから気持ち悪くなったぜよ」
「え、ごめんね私のせい!?だってほら、すごい仲良しそうだったから!だ、大丈夫?」
その場に蹲って下を向く仁王くんに近づいて私も一緒にしゃがんで顔を覗き込もうとした瞬間、仁王くんの腕が私の首に回った。
「わ、わ!!なに、どうしたの仁王くん!?」
「かかったぜよ。ほんにお前さん見かけを裏切らない反応をするのう。イジメ甲斐がありそうじゃ」
「おい仁王!瑠衣が嫌がってんだろ、離せよ」
「ん?別に嫌がってないじゃろ。のう瑠衣ちゃん」
何故か仁王くんの膝の上に乗るような体制になっていた私は、そう尋ねてくる仁王くんを間近で見て一瞬お兄ちゃんが脳裏をよぎった。別に似ていると言うわけじゃなくて、多分仁王くんの口元のホクロがお兄ちゃんを思い出させたんじゃないかと思う。
ああ、お兄ちゃんに会いたいな。そう考えながら仁王くんを見ていたら私の腕が誰かの手に引っ張られた。