05
「それ、本当っスか?」
「可能性としてはあり得る話だということだよ。性格もいいと思うし、言われ慣れてるだろうけど顔も整ってる」
性格がいい、とは知り合ってまだ一日も経っていなのでわからないが今のところ彼はとても好青年だ。人懐っこい笑顔はなんだか大型犬でも見ているかのようで和む。
「勘違いなんて、むしろして欲しいって言うか……もう今日の梨花っち可愛すぎて無理なんスけど」
「いつもの私とは違う?」
「うん、違う。なんか今日の梨花っちは素直すぎて調子狂うっス…!!」
「そうか…ごめん。黄瀬の調子を狂わせてしまった」
「いい意味で言ったんスよ!?今日みたいに素直な梨花っち、俺は好きっス!」
割と身長の高い私でも見上げるくらいの高さにある黄瀬の顔が綻ぶ。身長は高いし顔はいい、それに加えて性格も良いときたら彼はとてもハイスペック人間なんじゃないかと思えてきた。
「てかよ、それもしもの話だろ?梨花が黄瀬を好きとかありえないから真に受けんなよ」
「確かに峰ちんの言う通りかも〜。梨花ちんたまに変な事言う事あるし」
「そうだね、俺も梨花と黄瀬はない組み合わせだと思ってたよ」
「さしずめペットと主人と言ったところなのだよ」
「まあ黄瀬君ですからね」
「きーちゃんファイト!」
「ありがとっス桃っち!ってそれ以外みんなひどいっスよ!緑間っちに関しては何スか、ペットと主人って!」
「そのままの意味なのだよ。お前がペットで梨花が主人だ」
「そんな詳細いらないっスから!」
何だか私と黄瀬の話で盛り上がってるみたいだ。まだ慣れない。半日も経っていないから慣れる訳がないのだが、よもや私がわいわいと友達と一緒に過ごし、それも私の話題で盛り上がるなんて。嬉しさと戸惑いで私は何とも言えない顔をしていると思う。そんな時、私に向かってくる何かに気づいて前を向くと赤司が目の前に立っていた。
「梨花、君は黄瀬に自分が勘違いしたら困るだろうと言っていたね」
「うん」
「もし俺が可愛いと言っても、君は勘違いをしてくれるのか?」
俺が可愛いと言えば君は勘違いをしてくれるのか、か。つまり赤司が私に可愛いと言ったら私が彼を好きになるかと言う可能性の話についてだろう。その質問に私は答えた。
「どうだろうね。するかもしれないししないかもしれないよ」
私の返答に赤司は黙ってこちらを見つめる。綺麗な瞳だと思いながら私は続けた。
「さっきの話はなにも黄瀬に限った話じゃないよ。私はこれから君たちの一語一句に勘違いする女の子が出てきてしまうかもしれないと思って言っただけなんだ」
言い終えるとなぜだか黄瀬がシュンと凹んでいた。そして私の目の前にいる赤司は少しばかり口角を上げて微笑む。顔が整ってる人が笑うとこうも絵になるのかと私は素直に驚いた。