06
そして時間が経つのは思ったより早く、放課後になり私は早速帰ろうと荷物をまとめて椅子から立ち上がった。
「梨花っち!」
「?」
「何帰ろうとしてるんスか!部活行くっスよ」
「部活?私は部活なんて入っているのか?」
「もーまたそれっスか梨花っち!梨花っちは俺たちバスケ部の見守り係じゃないっスか!」
黄瀬はさも当然かのように私の肩を組んでそう言った。バスケ部の、見守り係?百歩譲ってマネージャーならわからなくもないが、見守り係…?見守り係とは一体なんだ。というかなぜ肩を組むんだ、目立つじゃないか。肩に回った黄瀬の腕から抜け出して私は黄瀬の正面に立った。
「見守り係とは一体何をするんだ?」
「え、それも忘れたんスか!?んも〜梨花っちったら忘れん坊っスね〜」
なんだか言い方がちょっとイラつくのはひとまず置いておこう。
「部員が練習サボってないか、マネージャーが仕事サボってないかを見守るのが梨花っちの仕事っス!要はあれっスよ、部活の監視みたいなもんっス」
「ほー。部活の監視ね…。監視しなければならないほどバスケ部は酷いのか?」
「最近は梨花っちのお陰で全くないんスけど最初の頃は結構酷かったっス!部員は練習に戻ってこないしマネージャーも桃っちしか働いてなくて」
練習に戻ってこないなら部活などやめてしまえと思うのは私だけだろうか。それに監督はどうした監督は。監督に監視させれば済む話ではないのか。マネージャーに関しては桃井しか働いていない、か。大方カラフルな頭の彼ら目当てで入部して来た女子達だろうと容易く想像がつく。
「でも梨花っちが来てから本当変わったっスよ!あの変わり様には赤司っちですら驚いてたぐらいっスからね」
「ふうん」
一体私が何をやったのかはなんとなくだが聞かないでおこう。だがそうか、部活に入ってるとなればこの後体育館に行きその監視をしなければならない。今日だけは私の身に起きたこの謎を少しでも理解したい事もあって家に帰りたいのだが。申し訳ないが今日だけは帰らせてもらおう。
「ごめん、黄瀬。今日だけ部活を休むことはできないかな」
「え…」
「すまない、そうしてもらえると有難い。明日からは出るようにするから今日だけは帰らせてくれ。じゃあ」
少々間抜けな顔をした黄瀬がぼーっと立ち尽くしながら私を見た。悪いが今日だけは帰らせてくれ。私は黄瀬の視線から逃げるように帰路へついた。この後、もう一つの衝撃的な事実が発覚するなど夢にも思わず。