07
「で、これはどういう状況ですか黄瀬くん」
「どうもこうもないっス!あの梨花っちが、今日だけは帰らせてくれなんて言うんスよ!?絶対何かあるっスよ!」
「あるとしても何故尾行するのかがわからないのだよ」
「でも私も梨花ちゃんが心配になってきちゃった」
「ったく、昼間ん時といいなんだってんだ」
「赤ちん〜梨花ちんどうしたの?」
「それが分からないから尾行してるんだ紫原。彼女が部活を休むなど今まで一度もなかっからな」
住宅街の電柱の影に隠れながら”キセキの世代”と呼ばれる彼らは今、同じ部活仲間の梨花の後を尾行していた。
「でも俺たち部活抜けてきてよかったんスか?」
「それなら問題ない。今日の分のメニューも明日こなせばいいだけだ」
「げっ、ってことは明日練習二倍ってことかよ!?」
「二倍…すみません、多分僕死にます」
「だ、大丈夫!テツくんには私がついてるから!」
「?ありがとうございます」
「きゃ〜〜!テツくんが私にありがとうございますって…!!」
嬉しそうにくねくねと体を揺らす桃井はさて置き、前方を歩く端正な容姿の彼女は尾行している彼らに特に気づく事もなく着々と家に近づいていった。そして事件は起こる。
「おっと!やっと見つけたぜ?5組の結城サン」
「うひょー噂以上に美人!」
「へー、この可愛こちゃんが例のターゲット?」
もうすぐ家だと言うのに何やら変な連中に絡まれた。昔の私ならありえないセリフを吐く男達を冷静に見つめているとリーダー格らしきガタイのいい男がズイッと私の前までやってくる。何か恨まれるようなことでもやったのだろうか。
「こりゃあいつが妬むのも無理ねぇよな」
「すまないがそこをどいてくれないか」
「声も可愛いじゃん。しかもクール!俺そういうの好きなんだよ」
「おいおい手出すのはやめとけよ、あいつのとこに連れてくだけが条件だろ?」
人がどけと言っているのに目の前のバカな男達は何をしているんだ。さっさと撒いて帰ろうと男達の間を通り抜けようとした時、チャラチャラとした男に腕を掴まれた。
「おっと〜?人の話は最後まで聞くもんだよ梨花ちゃん」
そう言って気持ち悪くニタニタ笑う男に掴まれた腕に虫唾が走る。
「離してくれないか?」
「離せって言われて誰が離すんでちゅか〜?これから梨花ちゃんを連れて行かなきゃいけないからそれは無理でちゅね〜」
「ギャハハハッ!セリフが下衆い!」
「ぶっ!お前どこの悪役のセリフだよ」
「…もう一度言う、その手を離してもらえないか」
「だーかーらぁ、何回言わせるのかな〜?聞き分けのない子にはお仕置きしちゃうぞ?」
そう言ってグイッと私を引き寄せたチンピラAは私の顎を掴んで顔を近づけてきた。汚い顔だな。ーーまぁ、私が言えた義理じゃないが。