鬼事 05




あれは去年のことだっただろうか。
わたしの友達が意を決して告白したことがあった。
相手はその子がクラスのなかでも最も仲の良かった男子だ。
わたしはびっくりした。
だって、二人は本当に仲が良くて、どちらもお互いを一番の友達のように思っていたから。その子がまさかそんな想いを抱いていたなんて、まったく気づかなかった。
そして、それは相手の子も同じだったようだった。
彼の返事は「ごめん」だったそうだ。
ずっと友達だと思っていたから、そういう風には見れない、と。
そう告げられた友達はひどく取り乱して泣いた。
聞いているこちらの胸をかきむしられるような、つらい泣き方だった。
涙を流す間に、切れ切れに彼女は後悔していた。
「どうして告白してしまったのか」と。
その後の二人の関係は戻らず、だんだんぎくしゃくとしていって、お互い相手から離れていって今では何の関係もなくなってしまった。
昔の仲が良かった二人の姿は、見る影もなかった。
ひとつの告白が今の関係さえも壊す。

それをわたしは恐れていた。
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