二人なら寒くない


冷凍庫に入れられたのかと思うような寒さの日だった。
見上げた空はどんよりとした灰色の雲に覆われていて、今にも雪を降らせそうな様子だ。
時折吹きつける風にわたしは身を縮めた。かじかむ指先はもう真っ赤だ。なんて寒さ。ほら、テツヤもこんなに震えて…

「って、テツヤ!顔が真っ青通り越して白くなってるんだけど!?大丈夫!?」
「…ちょっと大丈夫じゃないかもしれません…」

そう言いながら、テツヤは歯の根が合わないのかがちがちと歯を鳴らす。そういえば、ただでさえ薄い存在感が今日は輪をかけて薄くなっている。これはかなりヤバい。

「カイロとか持ってこなかったの?」

とりあえず温めるものを、と思ったわたしはポケットからカイロを取り出して、テツヤに差し出した。

「ほら」

しかしテツヤはそれをじっとみるばかりで、一向に受け取ろうとしない。
どうしたんだろう?そうわたしが怪訝な顔をしたあたりで、ふいにテツヤの手のひらがわたしの手のひらの上に重なった。氷みたいに冷え切った指先が微かに触れる。
気がつくとわたしはテツヤと手を繋いでいた。カイロを挟み込むように手を握り込まれる。
俗にいう恋人繋ぎというやつだ。
思いのほか大きくて骨ばったテツヤの手の感触に、わたしはドギマギした。恋人とはいえ、今までこんな風に触れることなんてなかったから。
突然のことに目を白黒させているわたしに、テツヤは微笑んでみせた。

「こうすれば二人とも温かいでしょう?」

そう言って手を握る力を強くする彼には、有無を言わせない迫力がある。
今日のテツヤはちょっと強引。だけど。

「…うん」

触れ合った肌の感触が嬉しくて、わたしは頬が火照るのを感じながらテツヤの手を握り返した。


※お題はcapriccioさまからお借りしました。
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