次に目を開けた時、そこは多分家だった。
死んだはずなのに生き返ったのかと思ったが違うらしい。
手足の動きづらさ、頭の不安定さを感じた。
どうやら赤ん坊に生まれ変わっているらしい。
あまり明瞭ではない視界に入る床の間やら梁を見てどうやら日本家屋にいるのではと予測を立てる。
本家も日本家屋のような造りであったことを考えるとまた匂宮の殺戮マシーンとして生まれ直したのだろうか。

「詩澄…!お母さんですよ!」

ふと視界に移ったのは母親らしき女の人。
何だか頑張ってあやしてくれるから笑っておいた。
そうすると喜んでくれるから悪い気はしない。
前世?で私を生んだ奴の顔は忘れてしまったけれどこんな感じだったのだろうか。

「本当に綺麗な目…いつかこの子も鬼殺の役割を果たすことになるのかしら…」

そう言って母親は少し泣いていた。
妹達は当然まだ生まれてきていないから今は私一人ということになるな。
それにしても、匂宮という組織はこんなに子供に対して愛情を表現するような所ではない。
あんな殺伐をさらに殺したような場所でこんな場面は想像もつかない。
つまりここは匂宮ではなく一般家庭なのだろうか…
しかし『きさつ』とはなんだろうか。
きさつ…気殺、期札、樹刷?

口が上手く動かないから取りあえず今は笑っておく。

暫くして私はもしかしてここは現代ではないのかと疑問を抱き始めた。
まずおかしく思ったのは自分が来ている服。
赤ん坊用の和服なのだ。
まあそういう家庭もあるだろう…
洗濯も板を使う家庭もあるだろうよ…
しかし数日後初めての外出をすることになった私は決定打を見つけてしまった。

家屋が全て木造だったのだ。
いくらここが田舎だとしても鉄筋コンクリート造りの家が主流だ。
いや、寧ろ一件ぐらいそういう家がないとおかしい。
そして街ですれ違う全員が着物だったのだ。
さらに文字が左から右ではなく、右から左に書かれていた。
流石にこれはおかしい。
どうやらタイムスリップでもしてしまったのかもしれない…

「今日はお父さんが帰ってきますからね」

母親が呑気にそんなことを言っていたが、私は困ったなと頭を悩ませていた。

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