今日は風柱となった実弥と初めての任務だった。
実弥は何時もよりピリついていた。
隈も酷い。
何かあったのだろうが聞くのも憚られる。
山奥に目的の鬼がいるらしいが、周囲にも鬼の情報があるため倒しながら進む予定だ。
昼間に集めた情報を元に鬼のアジトへ向かう。
「体調悪いなら休んでていいよ?」
「嘗めてんのかてめェ……」
「違う違う!集中できないなら足手纏いだってだけで」
「はァ?!」
「雑魚なら私一人でいいから、実弥は藤の家居てくれよ。なんかあったら烏で呼ぶからさ!じゃ!」
「おいッ!!」
私は実弥に捕まれる前にその場を離れた。
もしかして、実弥が慕っていた兄弟子に何かあったのだろうか。
確かに実弥はすぐキレがちだし態度は悪いけれど、それでもあそこまでなっているのは初めて見た。
実弥の精神をあそこまでぐらつかせるのはあの兄弟子ぐらいしかいないと思う。
出夢は私のことを適度に放っておいて時々様子を見に来て、いっぱい好きにさせてくれた。
家事をやって泣いて眠るまで付き合ってくれた。
それが私には正解だったってだけで、他の人はどうして欲しいのか全く分からない。
サンプルが自分しかないのだ。
私は出夢がしてくれたことをトレースすることしかできない。
出夢は私を亡くした後どうしたんだろう。
奴は私なんかよりも強いから大丈夫だろうが。
私を弔ったのだろうか。
それとも私のことなど気にも留めずに橙に挑んだのだろうか。
街中にいた鬼は雑魚だったので私一人で大丈夫だった。
なんてことはない、ただの鬼だ。
少し拷問をして情報を引き出しておく。
擦過傷はもう傷の内には入らない。
藤の家に着いて、飯と風呂を終わらせた。
部屋に戻る前に実弥の様子を見るために屋敷を探す。
月はもう沈みかけていた。
「よぉ」
「……無駄に気配消してんじゃねェよ」
実弥は縁側で外を眺めてた。
律儀な奴だからどうせ起きていたのだろう。
「あの夫婦を連れ去ったのはさっき殺した鬼で間違いなかったよ」
「そうかよ」
「あの山奥に連れて行った所までは確かだ。そっからは知らないとさ」
「……もう一匹狩って情報を確定させておきてェな」
「同意見だ」
実弥の隣に座って外を眺める。
その襟を掴んで私の膝にその頭を乗せてやる。
「何すんだてめェ!」
「膝枕でもしてやろうかと」
「離せ!!って力強すぎるだろうが!!」
「体術では私に勝てない、諦めな」
実弥はバタバタと暴れていたが、私の力が強すぎて諦めたようだ。
人を甘やかすといったら膝枕だ。
「何なんだよいきなり……」
「私はこれくらいしか人を慰める方法を知らないんだよ」
「……」
「寝てないんだろう、このまま寝ていい。体調は万全であるに越したことはないしね」
「……そーかよ」
少し硬い実弥の髪を弄っても抵抗されないのでそのまま触ってみる。
そのうちに月は完全に沈んでしまって、空が眩しくなってくる。
朝日を見ながら私も睡魔に身を委ねることにした。