14

夢を見ていた。
私が殺し屋ではない夢だ。
出夢と理澄は当たり前にそこにいて、楽しく過ごしてた。
東京タワーをどっちが早く登れるか出夢と勝負していた。
どうしようもない、どうでもいい、そういうことが出来る状況にいるようだ。
これは私の負けだな、と悟った所で目が覚めた。

私は布団に寝かされていて、実弥が寝かせてくれたのだろうと考える。
襖を開けると、太陽が高いところにいた。
また夜になれば鬼を狩りに行く。
この地域にはあと3匹ぐらいはいるはずなのだ。

家の主に挨拶をして実弥の様子を聞くと、外に聞き込みに行っているらしい。
この時代は監視カメラがないから本当に不便だ。
ハッキングも出来ないとなれば自分の足で情報を得るしかないのだ。
しかもその情報も曖昧とくれば何度も何度も情報を精査していく必要がある。
実に面倒な時代だ。

家主にご飯を用意して貰って五人分を平らげた私は刀を手入れすることにした。
この時間は嫌いじゃない。
頭の中を整理して、自分の出来ることを改めて確認していく。

多分私の体は17ぐらいになっているはずだ。
全盛期に近いところに来ていると言ってもいいだろう。
前世の私は18から死ぬ直前まで殺し屋として最高潮だった。
橙以外の存在から大きな傷を負ったことはなかった。
それは弟と妹がまだ生きていたからなのだと思う。

今の私はもう殺し屋としては失格だ。
偽善的でどうしようもない、人を助けることで弟たちを救おうとしている。
どの縁が出夢や理澄に繋がっているか分からないからだ。
カナエさんに上手く伝える自信はないが、今の私にとってはこれが答えだ。

私は手入れを終えて、部屋の外に出た。
もうすぐ日が沈む。
鬼狩りの時間だ。







「今日は俺が狩ってくるからお前は休んでろ」

実弥は開口一番そう言った。

「で、鬼はどこにいるの?」
「……お前俺の言うこと聞く気ないだろ」
「分かってんじゃん」
「はァ……」
「てか私のこと振りきれる訳ないんだから諦めなよ」
「……チッ」

体術であれば私は鬼殺隊の中では負け知らずだ。
剣を握っていると負けてしまうことは全然あるけど……

当然のように実弥に着いて鬼の居場所であろう所に向かう。
廃墟で鬼を見付けた実弥が殺す前に鬼を拘束する。
実弥が鬼に尋問していたが中々口が固いらしい。

「拷問なら任せてよ」
「こいつ俺の稀血で酔ってるから俺にやらせろ」
「拷問歴なら私の方が長いんだから任せなさい」

実弥は舌打ちをして鬼の前から退いた。

「得意じゃなかったんだけどやればやるほどうまくなるんだよね、拷問って」

鬼とは言えど人の形は保っている。
人の形があれば急所も痛いところも人と変わらないのだ。

まずは少し痛いところから進めていく。
段々と痛みが強くなる感覚を相手に覚えさせる。
人なら一回で終わる所を、鬼は再生してしまうので何度も繰り返してやるのだ。
人であれば死んでしまう痛みも鬼であれば死ぬことも出来ない。
鬼とはいえど痛覚はあるので無限に続く痛みに対してどんどん気力を失っていく。
今まで食べてきた人から延々と与えられる痛みに耐えられなくなってくるのだ。

「君たちの親はどこにいるのかな」
「…こ、、殺して、…殺してください……」
「もう一回目を弄ってあげようか。それとも脳の方が良かったかな」
「……南の、山、、の茅葺屋根の、家…です…」
「それで親は何をしているのかな」
「…子を、……作らせて…」

だから夫婦なのか。
子には栄養が沢山あると言われているらしいから子を作らせている、と。
普通に効率悪いと思うけど……

「なるほどね」

日輪等で首を斬ると鬼は灰になって消えて行った。
最期どんな顔をしていたんだろう。
今まで攫われた夫婦の組数を考えるとすぐに大規模な移動は難しい。
そうであればこのまま襲撃を仕掛けた方がいいかもしれない。

「お前いつもあんな拷問してたのかよ」
「そうだよ」

いや、襲撃しないにしても場所だけでも今夜中に特定しておくべきだろう。

「私が先に行って烏に案内させる。臆病な鬼だろうから稀血は気付かれる可能性が高い」
「ああ」
「……私はまだまだ食べてないものが沢山あるんだよ」
「は?」
「まだ実弥におはぎを作ってもらってないし、パンケーキだって作ってないし、なんなら私はあと100年生きて弟たちを見付けなきゃいけないの」
「……だからなんだよ」
「だから、そんな顔しないで」

気がかりなことがあるからもう少し生きておきたい。
同じ長男長女として、私はこの男に生きておいて欲しい。
誰にも甘えられない奴を、私は姉として見過ごすことが出来ない。
それに弟がまだいるというのなら生きておくべきだと思う。

可哀想な男だ。
兄弟子と引き換えに柱になって、どんな気持ちで任務に行くのだろうか。
同じように自分を犠牲にする戦い方をする奴だ。
こいつだっていつか死ぬ。
でも私よりは生にしがみ付いて、鬼を殺してほしいと思う。

「私はまだ死なない。私を殺すならもっともっと、本気で殺しに来てもらわないと」
「……そうだな。お前は随分しぶといから」

実弥が口元を緩めたのを見て、私はその場を発った。
月が高いところに上ろうとしていた。

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