目的の屋敷を見付けた時はもう日付が変わりそうな時間帯だった。
とりあえず烏を実弥の所へ遣った。
遠目から見ても明らかに異常だった。
何か、とても良くない雰囲気だった。
鬼の気配はするが、それ以上に何か異様な空気だった。
気配を消して屋敷の隙間から中を伺う。
そこには一人妊婦がいて、何かが妊婦の体に何かを打ち込んでいた。
鬼だ。
妊婦の腹がどんどんと膨らんでいったと思ったら、そのうちに出産が始まった。
まさか、妊娠から出産までの成長スピードを弄って早急に新生児を食べられるようにしているのか……
効率の悪さを血鬼術で解決していただなんて。
倫理観のない鬼だ。
他の場所からも屋敷の中を伺う。
そこでは連れ去られたであろう夫婦が何組も子作りに勤しんでいた。
鬼ではない異様な空気感はこれだったか。
隙間から漏れ出る催淫効果の強い物質が私の体内にも入っているようだ。
……良くないな、早く殺そう。
鬼が子を食べ、産婦が人間の集まる部屋へ戻ったのを確認した。
そうしてから私は背後から鬼に襲撃を掛けた。
鬼は驚いていたようだがすぐに対応してきた。
屋敷に入って分かったが、ここの空気は本当に良くない。
息をするたびに催淫効果が高まる。
最悪だ。
だが逆に心拍数が上がるので体の動きは良くなっている。
私は鬼を追う内に屋敷内の特に頑丈そうな部屋に来ていた。
壁は物質を吸収していないらしく、特にこの部屋は最悪だった。
流石に催淫されるとは想定外過ぎて対策をしていなかった。
視界がぼやけるので刀で自分の足を切って正気に戻す。
「自分で自分を傷つけて……今までそんな人は居なかったわ…恐ろしい子……」
「お前のが怖いわ普通に」
鬼を追い詰めることは出来ているが、自分の流血も酷い。
瀉血の意味も込めて呼吸での止血もしていない。
それにこの鬼、とにかく素早かった。
私でさえ追いつくのに精一杯だ。
この不調が鬼の攻撃によるものなのか、それとも血の出しすぎなのか判断出来ない程には私は満身創痍だった。
「死んでねェだろうな?!」
その声を聞いて、私は嬉しく思ったのを覚えている。
「すっごく元気だけど」
実弥は私から連絡が来る前にもう一体鬼を殺していたらしく、出血していた。
さすが柱だ。
「この男…!稀血か…!!」
その瞬間に血鬼術が暴走したのを肌で感じた。
増援が来るとは思っていなかっただろう鬼は混乱していた。
実弥の攻撃で頑丈な部屋がぶっ壊れた。
驚く鬼の頸は私の暴飲暴食によって斬られていた。
人間たちの様子を見に行くと、全員裸で気を失っていた。
散らばっていた着物を掛けてやる。
何と後味の悪い……
「……」
「……止血してやる」
屋敷の一角で隠を待つ。
出血過多で頭がぼんやりする。
思考力が明らかに低下している。
もう座っていることすらできない。
横になって呼吸を繰り返す。
実弥にされるがまま体に包帯を巻かれていた。
「……大丈夫?」
「それはこっちの台詞だボケェ」
「…お願いがあって」
「言ってみろ」
「私、やっぱり100年は生きられなさそう…」
「人間なんだから当たり前だろ」
「だから死ぬ前に子供を作っておきたいんだけど、実弥に頼めないかな?」
実弥のあんな顔を見たのは初めてだった。
何とも形容しがたい顔だ。
「…何で俺なんだよ」
「同じ長女長男だし、子育て上手そうだし、実弥なら私達に混ぜてあげてもいいかなって」
「……なんだそりゃ、もっとよく考えろ」
「ダメならダメって言ってよ」
「……ダメとは言ってねェだろが」
「ふーん……」
そこからはもう記憶が曖昧で、多分気を失ったんだと思う。
私が確認できないのなら、私の子孫に出夢たちを確認させる必要がある。
……もしかして伝え方が良くなかったかな?