煉獄家でのパンケーキパーティーを終えた私はそのまま杏寿郎と任務へ出ることになった。
千寿郎くんも喜んでくれたので良かった。
パンケーキを焼くとその度に目を輝かせてくれるので焼き甲斐があった。
お父さんは今日も滅茶苦茶機嫌が悪くて、挨拶したら舌打ちされた。
この前のパフェパーティーの時も滅茶苦茶睨まれた。
「前から気になっていたんだが、君はなぜ柱にならないんだ」
「直球だな」
「君はもう100体近く鬼を倒しているだろう。それに十二鬼月も倒している。階級も甲になっているだろう。それなのになぜ柱にならないんだ。他の柱達も疑問に思っているぞ」
「うーん、……まあ私は目的が違うから」
「それは君の前世の話に関係あるのか?」
「え、どっから漏れてんだそれ」
宇随か?
多分宇随だ。
間違いない。
「私の行動原理は基本的には弟と妹なんだよ」
「前世でいたと聞いているが、本当なのか」
「ああそうだよ。私はあいつらが住みやすい環境を作りたいだけなんだ。だから柱なんていう大層な階級は重荷でさ」
「そうか……君は意外と後輩育成にも向いていると思うから勿体ないな」
いや有り得ないな……
私は指導したり導いたりするような真似は出来ない。
私には前世の記憶、記録があるから出来ているだけで、一般人では難しいと思う。
「君の体術は鬼殺隊の中でも随一だ。それを後輩に伝えることが出来れば鬼殺隊員の実力の底上げになると思う」
「私、言葉にするのとか滅茶苦茶苦手」
「それは俺もだ」
「うん、そうっぽいよね」
杏寿郎が自分の動きを言語化させているところが全く想像つかない。
この人相当な努力家ではあるけどまあまあな天才タイプだよな。
体が当たり前にやっている、無意識で動いていることを改めて言語化するのは骨が折れる。
そもそもこれができなければその時点で死んでいたのだから、出来て当たり前のことなのだ。
「俺も君と手合わせする度に思っているが、君のその動きは本当に素晴らしい。見て盗もうと思ったがどうも上手くいかなくてな」
「うーん……どう動けばいいのか、思考よりも先に体が動くようになっているから難しいな」
「そこまで到達するまで素晴らしい鍛錬を積んだのだろう」
「褒められると照れる」
「だが自分を犠牲にするのはいただけないな!」
「そういうつもりじゃないんだけど……」
「今はお館様のご配慮で支援出来る隊員が着いていることが多いが、今後新しく入った隊士との任務も増えるだろう」
え、そうだったんだ。
やけに難易度高い任務をペアでこなすことが多いとは思っていたが、そういうことだったのか。
階級が上がって強い鬼を倒すことになるとは思っていたが、やけに強い奴ばかりだなあとは思っていた。
私一人で行くと相打ちになって野垂れ死ぬから、あえて一段階難易度を挙げてフォローを付けていたのか。
お館様には会ったことはないが、よく考えられる人なんだろう。
この前後輩との任務では私が一人暴れている内に鬼は死んでいた。
後輩は私にも怯えていたし、これでは後輩がいる意味はないなと私も思っていたのだ。
「君には弟君や妹君がいたのだろう。それに千寿郎ともすぐ仲良くなれていた。だから君にその気があれば後輩育成は出来ると、俺は思っている」
「杏寿郎は私を買被りすぎだ。私はそんな出来た人間じゃあないんだよ」
「君は自分を卑下しすぎだ。君にも色んな可能性がある。気が向いた時にでも挑戦してみてもいいんじゃないだろうか」
「まあ考えとくよ」
雑談はこれくらいにして、そろそろ任務についてしっかり話を合わせておかないとな。
それにしても何故杏寿郎は私に後輩育成をこんなに勧めてくるのだろうか。
自分にまだ継子がいないからか?
杏寿郎が師範であれば継子になりたがる奴なんざ掃いて捨てるほどいるだろうに。
同門の後輩でも入ってきたら考えてみるか……