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体の異変に気付いたのは春になろうとしていた時だった。
年が明けてから常に何となく体調がずっと悪かった。
全盛期の私にとっては有り得ないことだが、特に理由もなくうっすらと吐気があったり体が重く動きが鈍く感じる時があった。
それが暖かくなってきた頃にぱったりと止んだのだ。
何となく体は重いが、その他の異変は特にない。

「月の物も来なくなってしまって、何かの血鬼術に掛かっているかもしれないから調べて欲しい」
「………」
「うわ、しのぶの怒ってる顔久しぶりに見た」
「……本当に、本っ当にあなたはバカですね。どうしようもないバカです」
「何回も言わないで。それで何なの、血鬼術じゃないならなんなの」
「……あなた、妊娠してるんですよ」

思い当たる節はある。
でもまさか、こんなに早くとは思っていなかった。
想定外にも程がある。
いやー参った、どうしよう。
予測は出来たが確率的には低いと思っていた。
思わず頭を抱えた。

「普通に任務に行っていたことが信じられませんよ……今日から休んでください」
「いやでも……いやそっか、そうなるか」
「選択肢はありません。休みなさい」
「はい……」
「好きなだけ蝶屋敷にいていいですよ。体も心配ですし、目を離すと詩澄さんって無理するじゃないですか」

私にとっては非常に有難い申し出だった。
今の住処には何となく帰りづらい。
それに何を言われるのか分からない。
あとは迷惑も掛けたくなかった。

「空いてる部屋がありますから、今日から好きに使ってください」
「うん、ありがとう」
「お館様には私から詳しく説明しておきますから」
「何から何まで迷惑かけるね」
「そんなの、昔っからじゃないですか。今更ですよ」

しのぶはそう言って笑った。
久しぶりに笑っている顔を見た気がした。


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