匂宮詩澄の姿をこの半年見かけなくなった。
蝶屋敷に行けばほとんどの場合で寝かされているか、機能回復訓練をしていたのに。
蝶屋敷の奴等に聞いたところ知らないと言っていたが、何か隠している様だ。
無粋だから深くは追及しなかったが、腕か足でも切り落とされて戦えなくなっているのかもしれない。
死亡説も流れたが死んではいないらしい。
他の奴等に聞いても任務が被らなくなったと言っていた。
全ては憶測で、決定的な証拠がない。
柱合会議で話を振ってみると、明らかに冨岡と不死川の機嫌が悪くなった。
冨岡はすぐ立ち上がって「やはり探してくる」と言い出したので何とか引き留める。
不死川は匂宮とは仲良くしていたらしいし、突然の失踪に腹が立つのもわかる。
殺気が駄々洩れである。
甘露寺は匂宮について胡蝶に聞いている。
胡蝶は黙ってニコニコと笑みを絶やさない。
時透は虚ろな目をしている。
この場は混沌としていた。
「冬が終わる頃の合同任務では元気にしていた！千寿郎とパンケーキパーティーをして楽しくしていたのだが、どうしたのだろうか……」
「あんなに話題に事欠かない奴が音沙汰ないなんざおかしいよな」
「匂宮君は無鉄砲なところしかないからな、最悪の事態になっていないことを祈るが……」
そんな話をしているとお館様がいらっしゃったのでこの話は中断となった。