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「マフィアの方も順調に死んだよ」

ナギはウイスキーを飲み干しそう言った。
さっき見ていたメールはその件のことか。

「バカだから勝手に死んだとさ」
「手を汚さずに始末出来てなによりだ」
「そうだな」

数少ない信用できる店に俺達はいた。
風見は明らかに緊張しているが、反対にナギはいつもの様に緊張感の欠片もない。

「八月朔日はロアナプラに伝手があるのか?」
「知り合いがいるだけだ」
「その知り合いが意外と大物だったりな」
「はは、そうだといいな」

警察のデータベースですら虚偽しか記されていないナギのプロフィール。
やはり彼女の父親の力なのだろうか。

「よく食べるな…」
「そうか?裕也だってこれくらいは食べるだろう」
「そうだが、女性にしては食べる量が多いと思ってな」
「いつも食べてないからな。最近は零が作ってくれているから食べてるけれど」
「え…?降谷さんがナギの飯を…?」
「何か文句あるか」
「いえ、ありません!」

最近はこのバカ女のために昼飯を作ってやるのが日課になってしまった。
一度餌付けをしたら翌日から飯が出てくるまで僕を見て来るから仕方なく、だ。
手を込めて作った料理を美味しそうに食べてもらうのは悪くない。

「零にはこれからも飯を作って来てもらわなくてはな」
「自分で作ればいいだろ」
「それは面倒だからできない」
「面倒だから、じゃない。作れ」
「零の飯の方が美味いからな。私は作らない」

こいつと過ごして分かったことがある。
こいつは案外頑固ってことだ。
柔軟そうで意見を通さないように思っていたが、譲らない所は絶対に譲らない。

「零が飯を作らないと私はまた飢餓生活に戻ってしまうな」
「…あー、もう仕方ないな」
「やった」

ナギはそう言って笑った。
風見がナギのことを珍獣を見る目で見ていて、僕は少し面白く思った。

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