『八月朔日ナギだ。よろしく赤井秀一』
『日本語で構わない』
『そうか』

降谷君とやってきたのは部下の女。
彼女がFBIに差し出された盾、か。

「とっとと情報を渡して消えて欲しい所だが、部下が巻き込まれるとなればそうはいかないな」
「FBIとして日本の警察とは協力していきたいと思っている」

そう言うと彼は大きく舌打ちをし、席に着いた。
部下の女も降谷君に続いて席に着いた。
随分と従順な部下だ。

「FBIからの資料は読ませてもらった。元海兵隊の男が犯人だと断定していいんだな?」
「ああ。奴の所有している銃の弾丸と銃創が一致しているからな」
「犠牲者は四人になるが、動機と次のターゲットが分からない」
「それは僕たちの方でも捜査を進める。奴の潜入先に候補はないのか?」
「それも分からない。次のターゲットを狙いやすい所だとは思うのだが。今後分かり次第早急に連絡しよう」

それから会議は順調に進んだ。
我々としてはもう一度被害者と被疑者の身辺を洗うのが最優先だ。
そこから何かわかってくるだろう。

煙草でも吸いに行こうかと席を立つとちょうど隣に八月朔日がいた。
その隣には当然降谷君がいて、俺を睨んでいた。

「降谷君とうまくやれているようだ」
「秀一とは随分仲悪そうだがな」
「色々あってな」
「そうか。零は私に昼飯作ってくれるぐらいには懇意にしてくれているぞ」

ほー…それは以外だ。
案外手懐けられているのは降谷君の方だったりしてな。

「八月朔日は元海兵隊の監視役をするんだな」
「その予定だ」
「君一人で全うできるか正直不安だ」
「そうか」
「降谷君の方が相応しいと俺は思うのだが」

彼女のことを軽く調べたがこれといった実績はない。
ハッキリ言えば役不足。
彼女はただの盾であり、犯人に追跡を気付かせてしまう最大の穴となりうる。

「上司を盾にする訳にはいかないだろう。それに私はこうも思っている」

八月朔日はただ俺の胸倉を掴み、引き寄せた。

『零と仲良くなるよりあんたのケツにファック用の新しい穴を開ける方が簡単だ、ってな』

その目を見て正直ゾッとした。
この目をした人間に久々に出会った。
光を失った暗い瞳。
薄く笑った口からはクソみたいな冗談が吐き出される。
彼女は本来こんな所にいるような人間じゃない。
もっと戦地、いやもっとカオスな場所にいるような奴だ。

彼女はパッと手を離すと何事もなかったかのような顔をした。

「赤井捜査官の期待に沿えるよう頑張らせていただこう」
「…ああ。期待している」

それから彼等は部屋を出て行った。
彼女はきっと堅気じゃない。
だからこそこの最前線に選ばれた。
日本の警察もかなり厄介な人材を囲っているな…

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