「逃げてきたのか」
「…何でいるんだ」
本部に着くと赤井秀一がいた。
いつものように何を考えているかは分からない。
「俺も聞かせてもらっていたのさ」
「あー…叱られる準備はできてる」
「叱るのは降谷君の役目だ」
「じゃあ何しに来たんだ」
「君がどんな顔をしているか確認しに来ただけだ」
少し口角を上げて赤井は笑う。
零は多分鬼のように怒っているだろう。
鬼が着々と私を目指して迫ってきていると思うと背筋がピンと伸びた。
「で、どうだった?」
「案外君は人間らしいってことはわかったさ」
「私もFBIは暇だってことはわかった」
張の旦那は相変わらず抜けも隙もない奴だった。
正当な方法では尻尾を掴ませてくれるはずないのだからあれは仕方ない。
日本の警察官が一人二人死んだところで奴らになんの影響もないのだ。
これならロアナプラで名を馳せておくほうがいくらか影響力がある。
「で、これからどうするんだ」
「どうもこうも、明日は張の旦那と飯食って話してみるだけだ」
「俺も同行しよう」
「体の風通しをよくしたいんなら歓迎だ」
「…いや、遠慮しておく」
元海兵隊の犯人はきっとしばらくは襲ってこない。
三合会の会議までは動きがないと思ってもいい。
自分が犯人なら狙うのは完全にオフの日以外は無理だ。
あの三合会がボスを一人にしないなんてことは、素人が考えてもわかる。
仕事で、更に狙われていると分かっていて手を抜いてくれるような連中じゃない。
「俺たちは遠くで見守っておく」
「必要最低限で頼むよ」
「ああ」
隠れる意味もないので零が返ってくるまで自分の仕事を片付ける。
もうしばらくしたら零は帰ってくる。
背筋が伸びるな。
バン!!と大きな音を立てて扉が開いたと思ったら零が鬼の形相で立っていた。
「……八月朔日ナギ」
「…」
「今すぐ会議室に来い。今度は手洗いに寄ることは許さない」
「はーい…」
零はもう一度強く扉を閉める。
周りの奴らが明らかに怯えていた。
…滅茶苦茶怒ってる……