13

庁舎に戻ると零と新一、それと赤井秀一がいた。
まだ残業しているのか。
上司が働いているとなれば私も残業することになる。
それにしても新一と赤井秀一もいるとは珍しい。

「……生きてたか」
「勝手に殺すな」

零が大きく溜息をついた。
新一が私に勢いよく向かって来て、私の手を握った。
思わずその顔を見ると瞳が少し揺れていた。

「よかった……本当に心配したんだぜ…」
「一般人に心配される程落ちこぼれてない」
「そういう問題じゃなくて!」
「……じゃなくて?」
「ナギさんは仕事仲間だけど、俺にとっては友人でもあるんだよ」
「そりゃどうも」
「だから本当に、……生きて帰って来てくれてよかった」

軽くハグを交わして背中を叩いてやると、新一は握った私の手から力を抜いた。
自分のデスクに向かって荷物を置いた。
花が軽い音を立てた。

「贈り物まで貰ったのか」
「盗聴器や発信器の類は付いてなかった」
「違う、随分と愛されてるようだな」
「何が言いたい」

赤井秀一は花に手をやり、その包装を解いていた。
私のコップを勝手に持っていき、水を入れたそれに花を挿した。

「早く言え。この銃がお前を撃ちたがっている」
「花言葉は知っているか」
「知らないな」
「私はあなたに相応しい、だ」
「…はぁ?」
「白い薔薇の花言葉だ。覚えておくと良い」
「……無駄な知識だ」

薔薇を手折ってごみ箱にぶち込んだ。
部屋を出て、コーヒーを淹れてから屋上への扉を開けた。
風が吹いていて、少し肌寒さすらある。

ヘリポートへの階段に座ると力が抜けた。
久しぶりに疲れたかもしれない。
奴は変わってはいなかった、微塵も。

「……私はあなたに相応しい」

口に出すと改めてそう思う。
私達は確かに上手くやれていたと。
あの時、運命が違っていれば私は今もロアナプラに居ただろう。
だがそれは全て仮定の話だ。
今はもう、このルートしかない。

コーヒーの苦味が喉に染みる。
私達の道は違えたのだ。
今の私はお前に相応しくはない。

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